重症僧帽弁狭窄症を伴った巨大小腸腫瘍の麻酔経験

僧帽弁狭窄症(MS)では, 僧帽弁口面積(MVA)が進行性に減少し, MVA1.0平方センチメートル以下は重症とされ, 0.3平方センチメートル以下では生命保持は難しい. 今回MVA0.6平方センチメートルの重症MS症例の麻酔を経験したので報告する. 〔症例〕患者は64歳男性. 50歳時, 心臓弁膜症, 不整胴旨摘され内服治療するも3年前より自己中止していた. 今回, 下血にて緊急入院, 精査にて巨大小腸腫瘍と診断され, 出血のコントロールつかないため手術となった. 胸部X線写真で心拡大(心胸比70%), 経胸壁心エコー(TTE)で左房拡大著明, MVA0.6平方センチメートルであり重症MSと...

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Published in蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 269
Main Authors 浅野和美, 福山達也, 小山薫, 小田慶太郎, 鈴木俊成, 宮尾秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.09.2001
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ISSN0288-4348

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Summary:僧帽弁狭窄症(MS)では, 僧帽弁口面積(MVA)が進行性に減少し, MVA1.0平方センチメートル以下は重症とされ, 0.3平方センチメートル以下では生命保持は難しい. 今回MVA0.6平方センチメートルの重症MS症例の麻酔を経験したので報告する. 〔症例〕患者は64歳男性. 50歳時, 心臓弁膜症, 不整胴旨摘され内服治療するも3年前より自己中止していた. 今回, 下血にて緊急入院, 精査にて巨大小腸腫瘍と診断され, 出血のコントロールつかないため手術となった. 胸部X線写真で心拡大(心胸比70%), 経胸壁心エコー(TTE)で左房拡大著明, MVA0.6平方センチメートルであり重症MSと診断された. 心電図は心房細動であったがTTEでは左房内血栓は不明であった. 麻酔前投薬はミダゾラム2mg筋注とし, 麻酔導入はドルミカム・フェンタニル・ベクロニウム, 維持は酸素・亜酸化窒素・イソフルラン・フェンタニルで行った. 導入後, 肺動脈カテーテル(PAC)および経食道心エコー(TEE)を挿入した. 導入後の肺動脈圧(PAP)は78/38mmHgであったため, PGE1点滴静注を開始した. TEE上は左房拡大および左房内血流うっ滞があったが, 明らかな血栓はなかった. 術中はPACおよびTEEモニター下に循環管理を行い, 術中循環動態は安定していた. 術後は気管挿管のままICUに入室, 人工呼吸を行い, 肺高血圧に対しPGE1およびニトログリセリン, 心房細動の心拍数コントロールにてジルチアゼム, 左房内血栓形成予防にてヘパリン点滴静注し, 呼吸循環管理を行った. ICU入室後の循環動態も概ね安定しており, 術翌日気管内チューブ抜管, 術後3日目には一般病棟に転床した. 〔考察および結語〕本症例は, MVA0.6平方センチメートルの重症MSであったが, 肺動脈カテーテルと経食道エコーモニター下に周術期管理を行い, 良好な循環動態の維持が可能であった.
ISSN:0288-4348