失語症者における動作性知能検査

言葉に障害をもつ失語症者の, 思考を中心とする知能構造はいかなるものであろうか. 今回我々は, ウエックスラー成人用知能検査改訂版(WAIS-R)の中の動作性知能(PIQ)を調査しこの問題を考察した. 「対象と方法」症例は失語症例60例(男性50例, 女性10例, 16~76歳, 平均48.1歳)である. その内訳は脳出血29例, 脳梗塞24例, くも膜下出血6例, 脳外傷(局所損傷)1例である. 失語症のタイプは, ブローカ失語(B type)22例, ウエルニッケ失語(W type)9例, 全失語(G type)10例, 健忘失語(A type)13例, 伝導失語(C type)6例である...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 11; pp. 878 - 879
Main Authors 渡辺修, 宮野佐年, 米本恭三, 大橋正洋, 冨田祐司, 久保義郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1998
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ISSN0034-351X

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Summary:言葉に障害をもつ失語症者の, 思考を中心とする知能構造はいかなるものであろうか. 今回我々は, ウエックスラー成人用知能検査改訂版(WAIS-R)の中の動作性知能(PIQ)を調査しこの問題を考察した. 「対象と方法」症例は失語症例60例(男性50例, 女性10例, 16~76歳, 平均48.1歳)である. その内訳は脳出血29例, 脳梗塞24例, くも膜下出血6例, 脳外傷(局所損傷)1例である. 失語症のタイプは, ブローカ失語(B type)22例, ウエルニッケ失語(W type)9例, 全失語(G type)10例, 健忘失語(A type)13例, 伝導失語(C type)6例である. これらに対しWAIS-Rの中のPIQを検査しその下位項目を検討した. 「結果」PIQ値は, B type:88.2(±13.5), W type:70.0(±14.5), G type:64.8(±13.4), A type:84.5(±12.2), C type:84.8(±9.9)で, 有意にW type,G typeの低値をみた. 下位項目に注目すると絵画配列, 積木課題において有意にW type,G typeは低成績であった. 「考察」ウエルニッケ失語および全失語は他の失語型と異なり, 聴覚音を意味概念と結びつけるいわゆる意味野の損傷が大きいと考えられる. こうした失語型において絵画配列や積木課題で特に成績が不良であったということは, 意味野の損傷は特に論理思考の障害を示唆するのではないかと考えられた.
ISSN:0034-351X