封入体筋炎の微細構造とその臨床経過

「目的」封入体筋炎は緩徐進行性のミオパシーの1種で, 近位筋, 遠位筋ともに異常がみられ, CK値も軽度上昇する. 他の筋炎と異なり, 悪性腫瘍や膠原病などの合併は見られず, ステロイド剤は無効である. 今回我々は, 1992年以降当科にて封入体筋炎と診断された5症例について, その微細構造とリハビリテーション(以下, リハ)経過について検討した. 「対象」1992~1998年にかけて当科で組織診断を行った症例のうち, 封入体筋炎と診断された5症例(男性4例, 女性1例, 年齢61~84歳)を対象とした. 「方法」試料より未固定凍結標本を作製し, HE,GTR,PASなどの染色を行い, 一部は...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 12; pp. 971 - 972
Main Authors 奈良聡一郎, 平松直美, 中村健, 蜂須賀研二, 緒方甫, 山本辰紀, 田中良哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」封入体筋炎は緩徐進行性のミオパシーの1種で, 近位筋, 遠位筋ともに異常がみられ, CK値も軽度上昇する. 他の筋炎と異なり, 悪性腫瘍や膠原病などの合併は見られず, ステロイド剤は無効である. 今回我々は, 1992年以降当科にて封入体筋炎と診断された5症例について, その微細構造とリハビリテーション(以下, リハ)経過について検討した. 「対象」1992~1998年にかけて当科で組織診断を行った症例のうち, 封入体筋炎と診断された5症例(男性4例, 女性1例, 年齢61~84歳)を対象とした. 「方法」試料より未固定凍結標本を作製し, HE,GTR,PASなどの染色を行い, 一部は固定後エポンに包埋した. 組織所見は光顕および電顕にて組織学的所見を検索し, 経過はカルテをもとに調査した. 「結果」光顕では, いずれの標本にも筋線維の大小不同(5/5), 壊死・再生像(3/5)の所見や, rimmed vacuole(5/5), 炎症細胞(4/5), 細胞浸潤(2/5), 小角化線維(3/5)が認められた. 電顕で封入体が認められた. 「まとめ」多発筋炎のなかでも封入体筋炎は比較的高齢者に多いため, 本疾患による筋力低下に加え, 廃用による筋力低下も合併しやすいと考えられる. 一方, 他の筋炎と比べ封入体筋炎では, より積極的な運動負荷を加えても筋組織の障害を示さないという報告がある. 従って, 適度な運動を心掛けることで, 廃用による筋力低下を防ぎ, 日常生活での活動性を維持することが, リハ上重要であると思われる.
ISSN:0034-351X