日本人に検出されたFy(a-b-)型の遺伝子解析
<目的> Duffy(Fy)糖蛋白は, 三日熱マラリアおよびキモカインに対するレセプターとして存在している. Fy(a-b-)型は, 米国黒人では約68%存在するが, 白人および日本人では極めて稀である. 黒人にみられるFy(a-b-)型は, プロモーター配列GATA-1ボックスの変異により, Fy糖蛋白が合成されず, 赤血球に発現されない. 今回, 抗原スクリーニングにより, 日本人献血者からFy(a-b-)型(N.N.)を検出し, 血清学的検討および遺伝子解析を行った. <方法および成績> 抗原スクリーニングはマウスモノクローナル抗Fy3抗体(CBC-512)を用い...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 248 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1999
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | <目的> Duffy(Fy)糖蛋白は, 三日熱マラリアおよびキモカインに対するレセプターとして存在している. Fy(a-b-)型は, 米国黒人では約68%存在するが, 白人および日本人では極めて稀である. 黒人にみられるFy(a-b-)型は, プロモーター配列GATA-1ボックスの変異により, Fy糖蛋白が合成されず, 赤血球に発現されない. 今回, 抗原スクリーニングにより, 日本人献血者からFy(a-b-)型(N.N.)を検出し, 血清学的検討および遺伝子解析を行った. <方法および成績> 抗原スクリーニングはマウスモノクローナル抗Fy3抗体(CBC-512)を用いた. N.N.血球は, CBC-512と反応せず, 抗Fy^a , Fy^b 抗体とも陰性であった. 抗Fy^a , Fy^b , Fy3を用いた吸着・解離試験でも, 解離液中に抗体を認めなかった. EBウイルスでトランスフォームしたN.N.のリンパ球から, DNAを抽出し, Fy^a , Fy^b , GATA-1ボックスにそれぞれ特異的なプライマーを用いてPCR法を行った. GATA-1ボックスに変異を認めず, Fy^a 遺伝子のみ存在した. さらに, コード領域の塩基配列を決定したところ, コドン111番目(TTC)の1塩基(C)欠失によりフレームシフトがおこり, コドン122番目に終止コドン(TAG)が生じることがわかった. <考察> N.N.血球に, Fy^a , Fy^b , Fy3抗原は検出されず, Fy(a-b-)型であった. 遺伝子解析の結果, 黒人のFy(a-b-)にみられるGATA-1ボックスの変異はみられなかった. コード領域において1塩基が欠失したことにより, フレームシフトが生じ, 122番目以降のアミノ酸が合成されないことが示唆された. このため, Fy血液型糖蛋白が赤血球膜に固定されず, Fy(a-b-)型となったと考えられる. |
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ISSN: | 0546-1448 |