スナネズミ海馬神経細胞障害に与えるプロカインの虚血前投与と虚血後投与の効果の差

電位依存性ナトリウムチャネルの遮断が, 一過性脳虚血による神経細胞障害を改善するという報告がある. 我々もこれまでにリドカインの虚血性神経細胞障害に対する有効性を報告している(Neurosci Lett 1994 ; Anesthesiology 1997). 一過性虚血による海馬CA1錐体細胞障害には, 神経細胞からのグルタミン酸放出が深く関与するので, 本研究では虚血時アミノ酸放出に及ぼすプロカインの影響を検討した. さらに, プロカイン虚血前投与と虚血後投与の効果の差を検討することでその意義を考察した. 体重約80gの雄性スナネズミをハロセン麻酔した. 両側総頸動脈を剥離し, 絹糸をかけ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in蘇生 Vol. 17; no. 3; p. 190
Main Authors 中西和雄, 足立尚登, 多保悦夫, 新井達潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1998
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:電位依存性ナトリウムチャネルの遮断が, 一過性脳虚血による神経細胞障害を改善するという報告がある. 我々もこれまでにリドカインの虚血性神経細胞障害に対する有効性を報告している(Neurosci Lett 1994 ; Anesthesiology 1997). 一過性虚血による海馬CA1錐体細胞障害には, 神経細胞からのグルタミン酸放出が深く関与するので, 本研究では虚血時アミノ酸放出に及ぼすプロカインの影響を検討した. さらに, プロカイン虚血前投与と虚血後投与の効果の差を検討することでその意義を考察した. 体重約80gの雄性スナネズミをハロセン麻酔した. 両側総頸動脈を剥離し, 絹糸をかけて前脳虚曲の準備をした. 脳定位固定装置に固定し, 右海馬CA1領域に膜長1mmのマイクロダイアリシスプローブを挿入した. リンゲル液を毎分2μLで灌流し, 3分毎に回収した. プロカイン2μmolまたは生食を左脳室内に投与し, 15分後に脳温を一定に保って3分間の前脳虚血を惹起した. 回収液中のアミノ酸をHPLCポストカラムオルトフタルアルデヒド法で定量した. 次に, 同じ前脳虚血モデルを用いて7日後の海馬CA1錐体細胞を光学顕微鏡で観察した. プロカイン虚血15分前投与と虚血直後投与の遅発性神経細胞壊死に対する効果の差を検討した. 生食群では一過性虚血でグルタミン酸濃度は394%に増加し, 血流再開後下がった. プロカイン虚血前投与はこのピーク値を43%に低下させた. 3分間の前脳虚血で生食群では, ほとんどすべての神経細胞が壊死に陥った. プロカイン虚血前投与群ではほとんどの錐体細胞は生存していた. しかし, 虚血後投与の有効性は認められなかった. 血流再開後グルタミン酸濃度は直ちに低下したので, プロカイン虚血後投与がグルタミン酸濃度を下げるとは考えられない. プロカイン虚血前投与はグルタミン酸濃度を下げたので, その神経保護効果にはグルタミン酸放出の抑制が関与すると示唆される.
ISSN:0288-4348