対麻痺をきたす骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折の特徴

骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は多いが, 脊髄麻痺をきたすことはないと成書に記されてきた. しかし, このような症例の存在を1982年に発表し注意を喚気して以来, 同様の症例が報告されるようになった. 現在までに本症の11症例を経験したので, その特徴について検討した. (a)年齢:すべて65歳以上であった. 平均年齢は73.3歳の高齢者であった. (b)骨折の原因:転倒7, 思い当たるものなし3, および小自転車の持ち上げ1で, 軽微な外傷を契機とし, 脊椎の骨折を生じるような強大な外力ではなかった. (c)圧迫骨折の部位:T8 2, T1*11, T12 4, L*11, L2, 2, L3...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 28; no. 12; p. 1099
Main Authors 岩破康博, 荒巻駿三, 大友啓資, 西尾直子, 平沢泰介, 久保俊一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1991
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ISSN0034-351X

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Summary:骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は多いが, 脊髄麻痺をきたすことはないと成書に記されてきた. しかし, このような症例の存在を1982年に発表し注意を喚気して以来, 同様の症例が報告されるようになった. 現在までに本症の11症例を経験したので, その特徴について検討した. (a)年齢:すべて65歳以上であった. 平均年齢は73.3歳の高齢者であった. (b)骨折の原因:転倒7, 思い当たるものなし3, および小自転車の持ち上げ1で, 軽微な外傷を契機とし, 脊椎の骨折を生じるような強大な外力ではなかった. (c)圧迫骨折の部位:T8 2, T1*11, T12 4, L*11, L2, 2, L3 1で, 胸腰椎移行部に多かった. (d)骨折のタイプ:扁平椎9, 楔状椎2で, 多くは椎体の後壁も骨折した扁平椎が特徴的であった. (e)脊髄麻痺までの時間:1~2週未満1, 2~4週4, 1~3カ月未満3, 3カ月以上3で, 遅発性麻痺が大きな特徴であった. (f)脊髄造影所見:造影剤柱は骨折した椎体の後壁部付近で著しく圧迫されていた. (g)CT所見:椎体の後壁骨折が6例に明らかで, これが脊髄を圧迫していた. MRIでも骨折した後壁が脊髄を圧迫しているのがわかる. (h)治療法:前方固定術4, 後方からのハリントンやルーキーの手術7で, いずれも麻痺の回復が得られ, 多くは実用歩行が得られた. 前方法は侵襲が大きく高齢者には用いづらい. 本症の存在を知り, 他の病的骨折(悪性腫瘍の転移)との鑑別を厳しくするほか, 侵襲の少ない治療法の開発と予防方法の研究がまたれる.
ISSN:0034-351X