散乱光を用いた低温保存血小板の形態評価
【目的】細菌汚染の観点から見ると濃厚血小板製剤(PC)は低温で保存するのが望ましい方法である. しかし, 低温に曝された血小板は活性化して輸血後の生体内寿命が短くなるため実用化されていない. この寿命の短さは低温による形態変化が深く関与していると報告されている. そこで今回, 散乱光を用いて血小板の形態変化を観察し, 低温による形態変化のメカニズムについて検討した. 【方法】試料にはPCより調製した多血小板血漿(PRP:20x104/μL)と洗浄血小板(WPS:20x104/μL Tyrode's Hepes緩衝液, pH7. 35)を用いた. 血小板形態はrestingなディスコイ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 247 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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Summary: | 【目的】細菌汚染の観点から見ると濃厚血小板製剤(PC)は低温で保存するのが望ましい方法である. しかし, 低温に曝された血小板は活性化して輸血後の生体内寿命が短くなるため実用化されていない. この寿命の短さは低温による形態変化が深く関与していると報告されている. そこで今回, 散乱光を用いて血小板の形態変化を観察し, 低温による形態変化のメカニズムについて検討した. 【方法】試料にはPCより調製した多血小板血漿(PRP:20x104/μL)と洗浄血小板(WPS:20x104/μL Tyrode's Hepes緩衝液, pH7. 35)を用いた. 血小板形態はrestingなディスコイド状の血小板と活性化によってスフィア状, バルーン状に変形した血小板の光学的性質に基づく散乱光の違いにより評価した. 散乱光の測定には蛍光分光光度計(島津RF-1500)を用いた. 分光光度計内には還流型の恒温セルホルダーを設置し, 温度制御(4~37℃)を可能にした. 散乱光は励起波長380nm, 蛍光波長385nmにおける, 光軸に対する90°の側方散乱光強度を指標として撹拝下(800rpm)で測定した. 【結果】4℃で保存されたPRPの散乱光は血小板の形態変化にともない経時的に減弱し, 一昼夜保存すると散乱光はほとんど消失した. この散乱光の減弱傾向はEDTA(5mM)やTXA2アンタゴニストであるSQ29548(10μM)存在下では変化しなかったが, 血小板とフィブリノーゲンの結合を競合的に阻害するRGDペプチド(10μM~1mM)存在下で濃度依存的に抑制された. また, WPSを用いた場合もPRPと同様に低温下で散乱光は次第に減弱したが, PRPに比べて時間的な遅延が認められた. 【考察】散乱光を用いて血小板形態を観察した結果, 低温下における血小板形態変化にはフィブリノーゲン等, 血漿タンパク質の寄与が示唆された. 低温下で血小板形態を保持するには血漿を置換する方法も有効であると思われる. |
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ISSN: | 0546-1448 |