HCV母子感染の頻度と要因について

〔目的〕C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路として母子感染の存在が確認されているが, 母子感染の頻度や要因はいまだ明らかではない. 我々はHCVに感染していると考えられる母親から出生した児のHCV抗体の推移, HCV-RNAの有無を母子血清および母乳で経時的に測定したので報告する. 〔対象と方法〕1992年4月~1994年8月まで輸血部で妊娠前検査を行った858名の妊婦に対してHCV抗体を第2世代EIA法によりスクリーニングした. HCV抗体陽性の妊婦に対してHCV-RNAを5'-non-coding regionをプライマーに用いたRT-PCR法にて検査した. またHCV-RNA陽...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 964
Main Authors 岩下洋一, 泉水さおり, 澤文博, 沢田健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
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Summary:〔目的〕C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路として母子感染の存在が確認されているが, 母子感染の頻度や要因はいまだ明らかではない. 我々はHCVに感染していると考えられる母親から出生した児のHCV抗体の推移, HCV-RNAの有無を母子血清および母乳で経時的に測定したので報告する. 〔対象と方法〕1992年4月~1994年8月まで輸血部で妊娠前検査を行った858名の妊婦に対してHCV抗体を第2世代EIA法によりスクリーニングした. HCV抗体陽性の妊婦に対してHCV-RNAを5'-non-coding regionをプライマーに用いたRT-PCR法にて検査した. またHCV-RNA陽性妊婦よりの出生児に対しては, 新生児期と約3ヵ月おきに児の血清HCV抗体の推移および児血清と母乳中のHCV-RNAを測定した. 〔成績〕858名の妊婦のうち23例がHCV抗体陽性であった. この23例中8例が血清中HCV-RNAが陽性であった. HCV-RNA陽性妊婦6例の出生児について6~27ヵ月(平均13ヵ月)追跡調査を行った. 児血清中のHCV抗体は最長14ヵ月まで漸減しながら陽性を示したが, 上昇した例は認められなかった. 新生児期の血清の検討では, HCV-RNA陽性のものはなく, その後の経過観察でも陽性になった児はいなかった. この中にはHCV-RNA陽性の母乳を摂取していた児が2例あった. 〔考察〕我々はHCV感染に対してその頻度および経路について児血清HCV抗体およびHCV-RNAとその後の推移, また母乳中HCV-RNAの有無を測定することにより母子間垂直感染が成立する場合, いつ起るのか検討した. 現在はまだ症例が少なく, 諸家の報告と比較できないが, HCV-RNA陽性の母(n=6)から出生し, HCV-RNA陽性母乳を摂取した児(n=2)を含めHCVの母子間垂直感染を認めていない.
ISSN:0546-1448