Thermomoduleを応用した温度歯髄診断器について

私たちは, サーモモジュールを用いた, 冷熱刺激可能なThermotester II型を製作し, 冷刺激のみについて, 装置と臨床的正常歯髄の誘発痛について, 電気診も併用して検討した. 被験歯として, 21歳から39歳までの26人の上下顎前歯267歯を用いた. 装置は, 直径3mmの銀製の刺激導子を持つもので, 先端の温度が-6~-7℃になったときに歯冠中央部に接触させ, 刺激開始から誘発痛発現までの時間(誘発痛発現時間)と, 誘発痛発現から消失するまでの時間(誘発痛持続時間)とを測定した. また, Analytic Technology社のPulp Testerによる歯髄電気診断も併用した...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 3; no. 1; p. 139
Main Authors 三橋まどか, 浅野和美, 太田るみ, 松本光吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 01.09.1983
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Summary:私たちは, サーモモジュールを用いた, 冷熱刺激可能なThermotester II型を製作し, 冷刺激のみについて, 装置と臨床的正常歯髄の誘発痛について, 電気診も併用して検討した. 被験歯として, 21歳から39歳までの26人の上下顎前歯267歯を用いた. 装置は, 直径3mmの銀製の刺激導子を持つもので, 先端の温度が-6~-7℃になったときに歯冠中央部に接触させ, 刺激開始から誘発痛発現までの時間(誘発痛発現時間)と, 誘発痛発現から消失するまでの時間(誘発痛持続時間)とを測定した. また, Analytic Technology社のPulp Testerによる歯髄電気診断も併用した. その結果, 冷刺激による歯種別誘発痛発現時間は, 下顎中切歯が最も短く, 下顎犬歯が最も長い値を示した. これらの歯種間の測定値を統計学的に処理したところ, 下顎中切歯と下顎犬歯間, 下顎側切歯と下顎犬歯間に5%の危険率で有意差が認められた. また, 冷刺激による歯種別誘発痛持続時間は, 上顎中切歯が短く, 下顎中切歯が最も長い値を示したが, 約4~5秒の一定値を得ることができた. これらの歯種間には有意差はなかった. 電気診による歯種別痛み知覚閾値は, 下顎中切歯が最も低く, 上顎犬歯が最も高かった. 統計学的に処理すると, 下顎中切歯と下顎側切歯間, 上顎中切歯と下顎中切歯間, 上下顎犬歯間には有意差がなく, それ以外には認められた. また, 温度診と電気診は, 痛み知覚閾値の誘発機序が異なるためか, 相関関係は認められなかった. 以上の結果より, 今回, 得られた臨床的正常歯髄の冷刺激による痛みの持続時間を基礎にして, 炎症歯髄の痛み持続時間を測定し, 歯髄炎の鑑別診断を行うとともに器機の改良も行う予定である.
ISSN:0285-922X