当院における過去2年間の不適合輸血症例の実態と対策
近年, 安全な輸血療法への関心は急速に高まってきた. にも関わらず不適合輸血症例をいまだに経験する. そこで当院における過去2年間の不適合輸血症例を調査し, 実態の把握とそのための対策を検討したので報告する. 対象:平成7年11月から平成9年10月までの過去2年間の輸血症例とした. 結果:過去2年間の不適合輸血症例はABO不適合輸血は4例, 不規則抗体保有者への不適合輸血症例は2例であった. 《ABO不適合輸血症例》 症例1. 患者の血液型A3B型を夜間, 医師が血液型検査を行いB型と誤判し, B型のMAP-2, FFP-2を各1パック輸血. LDHの上昇を認めたものの, 不適合輸血との因果関...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 699 - 700 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1998
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 近年, 安全な輸血療法への関心は急速に高まってきた. にも関わらず不適合輸血症例をいまだに経験する. そこで当院における過去2年間の不適合輸血症例を調査し, 実態の把握とそのための対策を検討したので報告する. 対象:平成7年11月から平成9年10月までの過去2年間の輸血症例とした. 結果:過去2年間の不適合輸血症例はABO不適合輸血は4例, 不規則抗体保有者への不適合輸血症例は2例であった. 《ABO不適合輸血症例》 症例1. 患者の血液型A3B型を夜間, 医師が血液型検査を行いB型と誤判し, B型のMAP-2, FFP-2を各1パック輸血. LDHの上昇を認めたものの, 不適合輸血との因果関係は不明. 特別な治療は行わずに治癒. 症例2. 同姓の患者が二人いたことから, 看護婦が誤って, A型の患者にAB型のMAP約20mlを輸血. ソルメドロール1,000mg, ミラクリッド10万単位, ハプトグロビン2,000単位の投与により3時間後に状態安定. 症例3. 看護婦が誤って, AB型の患者にA型のMAP10mlを輸血. 特に輸血副作用は認められず特別の治療なく状態安定. 症例4. 患者の姓が似ていたため, 看護婦が誤って, A型の患者にO型のFFPを40ml輸血. ソルメドロール1,000mg, FOY2,000mg/day, ハプトグロビン2,000単位を投与した. その後副作用の症状は認められていない. 《不規則抗体保有者への不適合輸血》 症例1. 患者が転科した際に, 不規則抗体(抗E)を持つ患者であることを通知されていなかったため, 夜間, 医師が簡易法で交差適合試験を行いMAP-2を2パック輸血. 翌日調査した結果, 輸血した血液のE抗原が陽性であることが判明した. 症例2. 不規則抗体(抗E, 抗c)を持つ患者へ, 夜間, 医師が5パック(MAP-2)交差適合試験を行い, 全て合格と判定したため, 3パックが輸血された. 翌日, 輸血された血液の残りを回収し, 血液型を検査したところ, 1パックがE(+)c(+), 1パマックがE(-)c(+)であった. また, 輸血されなかった2パックの血液型はE(-)c(+)とE(-)c(-)であった. これらの症例を経験し, 早急に不適合輸血時の治療マニュアルが必要と考えこれを作成した. また, 当院では, 今後の対策として血液請求伝票への誤記を防止する. 輸血時に患者取り違えを防止する. 交差適合試験の判定の研修もしくは輸血検査の機械化. などに取り組む必要があった. おわりに:過去2年間に4例のABO不適合輸血症例と2例の不規則抗体への不適合輸血症例が発生していた. これらの症例より, 一連の輸血療法を行う過程で多くの問題点が存在していることが解った. 安全な輸血療法のためには, 各科単位で対処するのではなく, 病院全体の問題として受けとめ抜本的な対策を講じる必要があると思われた. |
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ISSN: | 0546-1448 |