嵌入型大腿骨頸部骨折に対する早期荷重保存療法の小経験

「目的」大腿骨頸部内側骨折は90%以上が手術的に治療されるが, 高齢者が多いため手術や麻痺に伴う合併症も生じやすく, 結果的にADLの低下を見る例が少なくない. 一方, 本骨折の中には比較的転位しにくいとされる嵌入型骨折が約15%存在する. 我々は嵌入型大腿骨頸部骨折に対し, 早期荷重保存療法を試みたので報告する. 「方法」平成10~11年の2年間に治療した大腿骨頸部骨折は20例で, このうち嵌入型大腿骨頸部骨折を呈した4例を対象とした. 男性1例, 女性3例, 受傷機転はいずれも転倒で, 受傷年齢は平均76歳, 経過額察期間は平均14カ月であった. パーキンソン病, 頸髄不全損傷の既往を各1...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 11; pp. 818 - 819
Main Authors 中村宣雄, 川津伸夫, 永野重郎, 京具成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.2000
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Summary:「目的」大腿骨頸部内側骨折は90%以上が手術的に治療されるが, 高齢者が多いため手術や麻痺に伴う合併症も生じやすく, 結果的にADLの低下を見る例が少なくない. 一方, 本骨折の中には比較的転位しにくいとされる嵌入型骨折が約15%存在する. 我々は嵌入型大腿骨頸部骨折に対し, 早期荷重保存療法を試みたので報告する. 「方法」平成10~11年の2年間に治療した大腿骨頸部骨折は20例で, このうち嵌入型大腿骨頸部骨折を呈した4例を対象とした. 男性1例, 女性3例, 受傷機転はいずれも転倒で, 受傷年齢は平均76歳, 経過額察期間は平均14カ月であった. パーキンソン病, 頸髄不全損傷の既往を各1例に認めた. 治療方法は入院後可及的早期より全荷重歩行練習を開始し, 杖歩行可能となった時点で退院許可した. 骨折部の状態は単純X線で経時的に評価した. 「結果」全例骨折部の転位を生じることなく骨癒合し, 平均53日の経過で杖歩行にて退院となった. また全例転倒前のADLを維持できており, 現在まで骨壊死その他の合併症の出現をみていない. 「考察」嵌入型大腿骨頸部骨折に対する保存療法の骨癒合率はおおむね80%台との報告が多い. 本治療法は, 手術や麻痺に伴う合併症がなく, ADLを維持しながら比較的早期に日常生活に復帰でき, また経済的という点で有用である. 手術療法以上に注意深い経過観察が必要であるが, 手術リスクの高い症例などに対してはまず考慮すべき治療法であると考える.
ISSN:0034-351X