下顎前歯部に発生した骨肉腫の一例について

顎骨に発心する骨肉腫は, 本腫瘍の7%であり, さらに前歯部に発生する率は低い. 今回我々は, 術前に生検による病理検査より, 骨軟骨腫と診断されたが, 術後の病理所見より骨肉腫の診断を得た症例について報告した. 患者は45歳, 女性で, 平成11年2月15日下顎前歯部の無痛性腫脹を主訴に紹介来院した. 現病歴, 家族歴共に特記事項はなく, 臨床検査所見も白血球増加を認めるのみであった. 初診時パノラマX線写真より, 左側下顎前歯部に境界不明瞭, 辺縁不整形のX線不透過像を認め, 咬合法およびX線CT画像より, 同部位唇側方向に骨膜反応を認めた. MRI T1強調像より, 唇側方向へ皮質骨と連...

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Published in歯科放射線 Vol. 39; no. 3; pp. 171 - 172
Main Authors 神野和子, 加藤尊巳, 山城光明, 岡田学, 金田隆, 宇都宮忠彦, 川本浩嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.09.1999
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ISSN0389-9705

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Summary:顎骨に発心する骨肉腫は, 本腫瘍の7%であり, さらに前歯部に発生する率は低い. 今回我々は, 術前に生検による病理検査より, 骨軟骨腫と診断されたが, 術後の病理所見より骨肉腫の診断を得た症例について報告した. 患者は45歳, 女性で, 平成11年2月15日下顎前歯部の無痛性腫脹を主訴に紹介来院した. 現病歴, 家族歴共に特記事項はなく, 臨床検査所見も白血球増加を認めるのみであった. 初診時パノラマX線写真より, 左側下顎前歯部に境界不明瞭, 辺縁不整形のX線不透過像を認め, 咬合法およびX線CT画像より, 同部位唇側方向に骨膜反応を認めた. MRI T1強調像より, 唇側方向へ皮質骨と連続したmass reasionを認め, その周囲に低信号域を認めた. T1造影像で腫瘍辺縁の造影効果が認められた. T2強調像でも, 腫瘍辺縁に高信号域が認められた. 骨髄には異常所見認められなかった. 以上画像所見から, 当科より骨肉腫の可能性を示唆するも, 生検により, 軟骨組織に富んでいること, 異型性が認められないことなどから, 骨軟骨腫との病理診断が得られた. その後, 骨隆起の急速な増大が認められたため, 再度X線診査を行ったところ, 咬合法およびCT所見より明らかなSun ray appearance所見を示し, 近遠心および唇側方向への増大が認められた. 皮質骨の著しい吸収および骨髄への進展は認められなかった. 手術は予定より早めて施行された. 術後の病理組織検査より, 内部に放射状に走行する線維性および骨組織形成が認められ, 細胞分裂像などの異型性が確認されたため, 骨肉腫と診断された. 手術では, 腫瘍に接する皮質骨および内部海綿骨が切除された. 今後, CT, MRI像も含めて, 慎重な検討を行し, 定期的な術後の経過観察が必要である.
ISSN:0389-9705