神経線維腫症に腹部大動脈 -下大静脈瘻を合併しステントグラフト内挿術が有用であった1例

症例は74歳, 女性. 1973年, 神経線維腫症と診断され当院に通院していた. 2003年4月, 突然腹痛および下背部痛が出現した. 症状の改善を認めず, 5月2日入院となった. 入院後, 徐々に呼吸困難が出現した. 胸部X線写真上, 肺野のうっ血像著明であった. 心エコー図上, 左室駆出率は73%と正常範囲であったが, 右心室は著明に拡大していた. 聴診上, 腹部に新たな血管雑音を聴取したため, 腹部造影CTおよび腹部動脈造影を施行した. 腎動脈下の腹部大動脈に動脈瘤を認め, 下大静脈とシャントを形成していることが判明した. うっ血性心不全の原因は, 腹部大動脈-下大静脈瘻からのシャント血...

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Published in心臓 Vol. 37; no. 6; pp. 478 - 482
Main Authors 井上彰雅, 阿部裕一, 橋本浩一, 笠井督雄, 小武海公明, 芝田貴裕, 望月正武, 横井良彦, 川口 聡, 石丸 新
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.06.2005
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Summary:症例は74歳, 女性. 1973年, 神経線維腫症と診断され当院に通院していた. 2003年4月, 突然腹痛および下背部痛が出現した. 症状の改善を認めず, 5月2日入院となった. 入院後, 徐々に呼吸困難が出現した. 胸部X線写真上, 肺野のうっ血像著明であった. 心エコー図上, 左室駆出率は73%と正常範囲であったが, 右心室は著明に拡大していた. 聴診上, 腹部に新たな血管雑音を聴取したため, 腹部造影CTおよび腹部動脈造影を施行した. 腎動脈下の腹部大動脈に動脈瘤を認め, 下大静脈とシャントを形成していることが判明した. うっ血性心不全の原因は, 腹部大動脈-下大静脈瘻からのシャント血流による右心への静脈還流の増加によるものと診断した. 内科的治療を継続するも症状改善せず心不全コントロール困難であったため, 腹部動脈瘤および腹部大動脈-下大静脈瘻に対しステントグラフト内挿術を施行した. この治療によりシャント血流が消失し, 肺野のうっ血も改善した. 神経線維腫症に合併する血管病変として動脈瘤, 動静脈瘻が報告されている. この成因として血管壁の脆弱化によるという報告が散見される. 脆弱した血管に対する人工血管置換術は侵襲が大きいと考え, 侵襲の少ないステントグラフト内挿術を選択した. 著者らの調べた範囲では, 神経線維腫症に腹部大動脈-下大静脈瘻を合併し心不全を呈した症例に対しステントグラフト内挿術を行い著効した症例は初めてであり, 貴重な症例と考え報告する.
ISSN:0586-4488