輸血部でのHIV感染検査体制確立11年の経過と今後の問題点
目的:近年, 本邦において, 非血友病のHIV感染者の増加が報告されている. HIV抗体検査において, Window Periodの問題, 患者プライバシーの問題などHIV検査には, 多くの課題が指摘されている. そこで本院輸血部での過去11年間のHIV抗体検査統計における現状の紹介と, ルーチン検査でのHIV検査の問題点について検討した. 方法:本学輸血部では, 1987年5月よりルーチン検査としてPA法によるHIV抗体スクリーニング検査(SC)を, 又自家製Westen Blot法による確認検査を開始し現在はSC検査はSanofi社のELISA法, 確認検査は同社のLav Blot1-2に...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 5; pp. 662 - 663 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.09.1998
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 目的:近年, 本邦において, 非血友病のHIV感染者の増加が報告されている. HIV抗体検査において, Window Periodの問題, 患者プライバシーの問題などHIV検査には, 多くの課題が指摘されている. そこで本院輸血部での過去11年間のHIV抗体検査統計における現状の紹介と, ルーチン検査でのHIV検査の問題点について検討した. 方法:本学輸血部では, 1987年5月よりルーチン検査としてPA法によるHIV抗体スクリーニング検査(SC)を, 又自家製Westen Blot法による確認検査を開始し現在はSC検査はSanofi社のELISA法, 確認検査は同社のLav Blot1-2によるWB法を用いている. 又研究目的で, HIV-1中和抗体, DNA-PCR法, HIV-1RNA定量などを, 状況に応じて測定している. 成績:(1)過去11年間のHIV抗体SC検査件数は, 総計17,301件で88年より平均的に1,500件から1,800件推移している. (2)血友病及び類縁疾患における抗HIV抗体陽性率は, 血友病A陽性者56例, 陽性率30.2%血友病B13例陽性率48.1%VWDは陽性者なしであった. 又非血友病患者8例の陽性者を経験した. (3)ルーチン検査で経験した, 非血友病の2症例の考察により得た問題点について検討した. 症例Aは, 不妊症免疫治療時の術前検査として, HIV抗体検査をするにあたり, 夫に十分なインフォームドコンセントがなされていたため, その結果の告知, 及びカウンセリングが, 主治医によりスムーズに行われた症例である. 症例Bは輸血歴のない1歳4ヵ月の小児が術前検査でSC陽性, WB非特異的陽性反応を示し, 最終的にDNA-PCR法で陰性を判定し得た症例である. 考察:(1)HIV抗体検査でWindow Period感染が最大の問題であろう現在ルーチン検査では, ELISA法, PA法等のスクリーニング検査を行い, WB法で確認されているのがほとんどとおもわれる. WB法で判断がつかない場合, 検査室レベルにおいてPCR検査体制を確立する必要がある. (2)現在, 輸血後HIV抗体検査のみ保険診療が認められている. 本院輸血部では輸血前, 手術前患者の同意を得て, 又倫理委員会の承認を得て, ほぼ全例にHIV感染検査を行うようになった. 手術にともなう合併症の発生や, 院内感染の発生を防止するため, 輸血前, 手術前のHIV抗体検査が求められ, この保険適応の早期認可が望まれる. |
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ISSN: | 0546-1448 |