非溶血性輸血副作用惹起症例に見い出された抗IgA2抗体について

私たちは非溶血性輸血副作用症例における患者の抗血漿蛋白質抗体および血漿蛋白質含量の検査を行っている. 今回, ゲル内二重拡散法で沈降反応を認める抗IgA2抗体が検出されたので報告する. 「症例」 60歳 女性 慢性関節リウマチ, バセドウ病の患者で, 貧血の改善のために放射線照射済みRC-MAP2単位の輸血を開始した. 輸血開始から20分経過後, 気分不快を訴えたため輸血を中止した. この時点での体温は35.8℃(輸血前36.8℃)と低下が認められた. 「方法」 患者血清中の抗血漿蛋白質抗体の検出には, ゲル内二重拡散法およびELISA法を用いた. 抗IgA抗体の確認には精製ヒト血漿由来IgA...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 260
Main Authors 伊佐和美, 渡辺嘉久, 仁井原裕美, 前田伊規子, 荒木威, 川上雄起, 山内康照, 筒井幸子, 嶋田英子, 池田和代, 光永滋樹, 中島一格, 十字猛夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2001
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:私たちは非溶血性輸血副作用症例における患者の抗血漿蛋白質抗体および血漿蛋白質含量の検査を行っている. 今回, ゲル内二重拡散法で沈降反応を認める抗IgA2抗体が検出されたので報告する. 「症例」 60歳 女性 慢性関節リウマチ, バセドウ病の患者で, 貧血の改善のために放射線照射済みRC-MAP2単位の輸血を開始した. 輸血開始から20分経過後, 気分不快を訴えたため輸血を中止した. この時点での体温は35.8℃(輸血前36.8℃)と低下が認められた. 「方法」 患者血清中の抗血漿蛋白質抗体の検出には, ゲル内二重拡散法およびELISA法を用いた. 抗IgA抗体の確認には精製ヒト血漿由来IgA, ミエローマIgA1, IgA2m(1)およびIgA2m(2)を用いたウェスタンプロット法を行った. また, 血漿蛋白質含量は, ネフェロメトリー法(イメージシステムベックマン社製)で測定した. 「結果」 ゲル内二重拡散法による沈降反応が輸血製剤由来血清, 健常人血清, 精製ヒト血漿由来IgA, ミエローマIgA2m(1)およびIgA2m(2)に対して認められたが, ミエローマIgAlには認められなかった. ELISA法でも同様に精製ヒト血漿由来IgAに対する抗体が検出された. この抗IgA抗体はウェスタンプロット法によりIgA2m(1)およびIgA2m(2)に対する抗体であることが確認された. また, 輸血副作用発症前の患者血清を用いた血漿蛋白質含量の測定ではIgAの欠損は認めなかった. 「考察」 ゲル内二重拡散法およびウェスタンプロット法においてサブクラスIgA2特異的抗体が確認され, IgA2欠損の可能性が考えられた. 現在, 患者末梢血より抽出したRNAおよびDNAを用いて遺伝子レベルでの検討を行っている.
ISSN:0546-1448