側方への外乱に対する杖の影響
健常男性7名を対象として, center of mass(COM)の位置に近い骨盤部での側方外乱に対する杖の効果とその姿勢調節について, 杖歩行中の片脚立脚期をシミュレーションして検討した. 実験姿勢は右側での片脚起立とし, 左手でT字杖をついた状態にて体重約5%の力で前額面にて水平方向に無作為に外乱を加えた. その際の右下肢および体幹筋の筋活動と足底圧を, 表面筋電計および足底板式足底圧センサーシステムGANGASにて同時記録した. 杖を用いずに右脚で片脚起立を行った場合にも同様の測定をして, 右方向への外乱時の筋活動と足底圧について両者を比較した. 杖不使用時には, 外乱に対して支持脚の前...
Saved in:
Published in | リハビリテーション医学 Vol. 37; no. 11; p. 887 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.11.2000
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0034-351X |
Cover
Summary: | 健常男性7名を対象として, center of mass(COM)の位置に近い骨盤部での側方外乱に対する杖の効果とその姿勢調節について, 杖歩行中の片脚立脚期をシミュレーションして検討した. 実験姿勢は右側での片脚起立とし, 左手でT字杖をついた状態にて体重約5%の力で前額面にて水平方向に無作為に外乱を加えた. その際の右下肢および体幹筋の筋活動と足底圧を, 表面筋電計および足底板式足底圧センサーシステムGANGASにて同時記録した. 杖を用いずに右脚で片脚起立を行った場合にも同様の測定をして, 右方向への外乱時の筋活動と足底圧について両者を比較した. 杖不使用時には, 外乱に対して支持脚の前脛骨筋の方がヒラメ筋より早く活動を開始した. 一方, 杖使用時には, ヒラメ筋が前脛骨筋より先に活動を開始した. また, 杖不使用時はGANGASにて近似される足底圧中心が一旦後方へ偏位してから前方に偏位したが, 杖使用時にはその後方偏位が消失していた. これは, 杖不使用時には外乱によってCOMが外側へ偏位するため, 足部を内反させることによって足底圧中心を外側へ移動させてこれに拮抗しているのに対し, 杖使用時は杖に頼るために下腿を後方へ引き, 上肢に体重を乗せるような姿勢をとる結果と考えられた. 以上より, 杖を使用しない場合には足関節内反によるankle strategyを用いて前額面の姿勢制御を行うのに対し, 杖を使用した場合にはankle strategyによる矢状面での運動調節によって姿勢制御を行うことが示唆された. |
---|---|
ISSN: | 0034-351X |