RHAG遺伝子の発現調節機構の解析

Rh血液型抗原の発現は, 赤血球ならびにその前駆細胞特異的であるとされてきた. RHD, RHCE遺伝子のノーザンブロッティングを用いた発現の解析では, 赤芽球系細胞にのみそのmRNAが認められている. RHAG(Rh50)遺伝子は, regulator typeのRhnullにおいて変異が見いだされるなど, Rh抗原発現に深く関与することが明らかになっている. 今回, RHAG遺伝子についてその発現, およびその調節機構について分子生物学的検討を行い, Rh抗原の発現機構の解明を試みた. 【材料および方法】7白血病細胞株(HEL, K562, Jk-1, KU812, HL60, Raji,...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 183
Main Authors 岩本禎彦, 近江俊徳, 山崎昌子, 奥田浩, 梶井英治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
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Summary:Rh血液型抗原の発現は, 赤血球ならびにその前駆細胞特異的であるとされてきた. RHD, RHCE遺伝子のノーザンブロッティングを用いた発現の解析では, 赤芽球系細胞にのみそのmRNAが認められている. RHAG(Rh50)遺伝子は, regulator typeのRhnullにおいて変異が見いだされるなど, Rh抗原発現に深く関与することが明らかになっている. 今回, RHAG遺伝子についてその発現, およびその調節機構について分子生物学的検討を行い, Rh抗原の発現機構の解明を試みた. 【材料および方法】7白血病細胞株(HEL, K562, Jk-1, KU812, HL60, Raji, MOLT-4), 子宮頚癌細胞株(HeLa), 胎児腎細胞株(293), ならびに成人由来の各臓器(脳, 肺, 肝臓, 骨髄, 脾臓, 腎臓)よりtotal RHAを抽出し, RHD, RHCE, RHAG mRNAをノーザンブロットおよびRT-PCR法を用いて解析した. RHAGの発現調節機構を調べるために, inverse PCR法を用いて5'flanking領域をクローニングし, 得られたシークエンスはTFSEARCH ver.1.3を用いて転写因子結合モチーフを予測した. K562とHeLa細胞における転写開始部位は, 5'RACE法によって同定した. 5'flanking配列はCAT vectorに挿入し, HEL, K562, HeLa細胞に遺伝子導入し, プロモーター機能の解析を行った. 【結果および考察】各種細胞株のノーザンブロット解析では, 赤芽球系細胞株にのみRHD, RHCE, RHAGの発現が認められた. RT-PCR法においても赤芽球系細胞にのみ強い発現が認められ, HL60, Raji, MOLT-4ではbandは認められなかったが, HeLaおよび293細胞には弱い発現が認められた. また, K562およびHeLa細胞の転写は同じ位置からスタートすることがRACE法によって明らかになった. これに対し, 5'flanking領域のシークエンスならびにプロモーターアッセイはRHAGの赤芽球系細胞特異的な発現を強く示唆し, RT-PCRの結果とは矛盾する結果となった. しかし, RHAG遺伝子はその転写発現機構によってRh抗原の赤芽球系細胞特異的発現に深く関与していることは明らかであり, その他の細胞における発現の意義については更なる検討の必要がある.
ISSN:0546-1448