歯肉剥離掻爬術後の微細血管構築の形態変化に関する実験的研究-とくに全層歯肉弁剥離創について

本研究の目的は, 全層弁により歯肉を剥離したのち, その治癒過程にかかわる創傷周囲組織の微細血管構築を立体的組織関係を損なうことなく詳細に観察することにある. 本実験には, 健康な歯周組織を有する雑種成犬48頭を用い, 上顎左側前歯の一定の位置を実験領域とし, 全層歯肉弁剥離を行った. 術後5, 7, 14, 21, 28, 42日の各期間における微細血管鋳型標本をOhtaら(1990)の方法に従って作製し, 走査電顕により観察するとともに, 病理組織学的検索を加え, 比較検討を行った. その結果, 創傷治癒初期過程において, 歯肉骨膜血管網と歯根膜血管網との循環路は, 歯肉骨膜血管網側からよ...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 33; no. 2; pp. 297 - 313
Main Authors 西川義公, 信藤孝博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 01.06.1991
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ISSN0385-0110

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Summary:本研究の目的は, 全層弁により歯肉を剥離したのち, その治癒過程にかかわる創傷周囲組織の微細血管構築を立体的組織関係を損なうことなく詳細に観察することにある. 本実験には, 健康な歯周組織を有する雑種成犬48頭を用い, 上顎左側前歯の一定の位置を実験領域とし, 全層歯肉弁剥離を行った. 術後5, 7, 14, 21, 28, 42日の各期間における微細血管鋳型標本をOhtaら(1990)の方法に従って作製し, 走査電顕により観察するとともに, 病理組織学的検索を加え, 比較検討を行った. その結果, 創傷治癒初期過程において, 歯肉骨膜血管網と歯根膜血管網との循環路は, 歯肉骨膜血管網側からよりもむしろ歯根膜血管網側から積極的な回復機序が行われていた. そして, このような循環路の回復過程に起因して, 一時的に歯の支持機能が低下するため, 術後の治癒過程にある組織保護に対して, 慎重な臨床的対応が必要であると考えられる.
ISSN:0385-0110