抗生物質の投与にて脾腫および汎血球減少症の著明な改善を認めた僧帽弁閉鎖不全症の1例

著明な脾腫と脾機能亢進による汎血球減少症を伴えば出血傾向や易感染性の危険が増すため脾腫の原因の正確な評価は治療上重要な問題となる. 今回我々は肝脾腫と汎血球減少症をきたした僧帽弁閉鎖不全の症例を経験し, 心不全の治療よりも抗生物質の投与にて脾腫が著明に縮小したことから感染性心内膜炎が脾腫の原因であったと考えられた症例を経験したので報告する. 症例は45歳女性. 全身倦怠感, 呼吸困難, 全身浮腫にて来院し僧帽弁閉鎖不全による心不全の診断にて平成5年5月31日当科入院. 入院時発熱なく, 汎収縮期雑音とIII音ギャロップを聴取, 肝臓, 脾臓を各5横指触知した. 検査成績では汎血球減少症を示した...

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Published in心臓 Vol. 27; no. 6; pp. 530 - 535
Main Authors 牟田毅, 永島隆一, 車忠雄, 森唯史, 丸山徹, 加治良一, 権藤久司, 金谷庄蔵, 藤野武彦, 仁保喜之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.06.1995
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ISSN0586-4488

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Summary:著明な脾腫と脾機能亢進による汎血球減少症を伴えば出血傾向や易感染性の危険が増すため脾腫の原因の正確な評価は治療上重要な問題となる. 今回我々は肝脾腫と汎血球減少症をきたした僧帽弁閉鎖不全の症例を経験し, 心不全の治療よりも抗生物質の投与にて脾腫が著明に縮小したことから感染性心内膜炎が脾腫の原因であったと考えられた症例を経験したので報告する. 症例は45歳女性. 全身倦怠感, 呼吸困難, 全身浮腫にて来院し僧帽弁閉鎖不全による心不全の診断にて平成5年5月31日当科入院. 入院時発熱なく, 汎収縮期雑音とIII音ギャロップを聴取, 肝臓, 脾臓を各5横指触知した. 検査成績では汎血球減少症を示したがCRP陰性, 血液培養陰性であった. 腹部エコーにて著明な肝脾腫, 心エコーにて僧帽弁前尖に疣贅を認め, 高度僧帽弁逆流と肺高血圧(RVSP=82mmHg)を認めた. 経過中に発熱, CRP上昇, 脾腫の増大と汎血球減少症の増悪が出現し抗生物質を投与したところ, 心不全治療に反応しなかった脾腫が著明に縮小し汎血球減少症の改善を認めた. しかし貧血の改善に伴い心仕事量増加によると思われる心不全の増悪が出現したため僧帽弁置換術を施行し, 心不全, 脾腫, 汎血球減少症は改善した. 本症例のように発熱・CRP上昇を伴わずに発症した僧帽弁閉鎖不全症でも感染性心内膜炎が存在する可能性があり, 脾腫・汎血球減少症の病態改善に抗生物質の投与も考慮する必要がある.
ISSN:0586-4488