緊急心臓大血管手術の麻酔

心臓大血管手術の緊急手術は, 病態の複雑性, 種々の合併症など, 術前状態不良により, 麻酔管理は困難を伴うことが多く, その予後は満足すべき成績ではない. 今回われわれは1980年1月から1985年4月までの5年4ヵ月の間に経験した緊急手術を要した心疾患, 大血管疾患(大動脈瘤)35例について報告する. この間, われわれが管理した緊急手術数は3,230例で, 心臓大血管手術は1.08%であった. 症例を疾患別にみると, 胸部大動脈瘤7例, 未熟児PDA8例, TGA4例, TAPVR2例, 大動脈縮窄複合2例, 大動脈離断症, 単心房単心室, 収縮性心膜炎, 両心房破裂, おのおの1例で,...

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Published in蘇生 Vol. 4; p. 108
Main Authors 宮手美治, 瀧健治, 川村隆枝, 高田良子, 金野光雄, 三浦政直, 涌沢玲児
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.03.1986
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ISSN0288-4348

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Summary:心臓大血管手術の緊急手術は, 病態の複雑性, 種々の合併症など, 術前状態不良により, 麻酔管理は困難を伴うことが多く, その予後は満足すべき成績ではない. 今回われわれは1980年1月から1985年4月までの5年4ヵ月の間に経験した緊急手術を要した心疾患, 大血管疾患(大動脈瘤)35例について報告する. この間, われわれが管理した緊急手術数は3,230例で, 心臓大血管手術は1.08%であった. 症例を疾患別にみると, 胸部大動脈瘤7例, 未熟児PDA8例, TGA4例, TAPVR2例, 大動脈縮窄複合2例, 大動脈離断症, 単心房単心室, 収縮性心膜炎, 両心房破裂, おのおの1例で, 計35例中21症例が死亡, 死亡率は60%と高率であった. なお同時期に行われた同様の疾患の待機手術は54例で, 12例が死亡, 死亡率は22%であった. 大動脈瘤は31%が緊急手術施行例であり, 麻酔方法もO_2 +fentanyl 5例, GOF 3例, NLA 2例, GO 2例, その他と病態に則した種々の麻酔法が行われた. 術前よりshock, 呼吸不全などを伴ったものが多く, 術後も呼吸管理を要したもの14例, 急性腎不全のため透析を必要としたもの6例, その他種々の合併症が認められ, 特に術前shockを伴ったものは術後, 呼吸不全, 急性腎不全の合併が多かった. 先天性心疾患は10例で, 3例に低体温麻酔下の開心術, 7例にGO+pancuroniumおよび麻酔を併用したshunt手術が行われた. 術前より高度の心不全, 低酸素症を呈し, 人工呼吸下のもの9例で, table denth 2例を含め術後8例を失った. 以上, 心大血管緊急手術例について報告したが, 手術成績は術前状態によく反映しており, 手術成績向上のためには, 可及的内科療法により術前状態の改善を得た後, あるいは先天性疾患などは, 悪化する前に早期かつ積極的に手術を行うことが成績向上の鍵となると考えられた.
ISSN:0288-4348