良性肺疾患にみられた異型気道上皮の分子生物学的検討

〔目的〕良性肺疾患にみられる異型気道上皮が, 肺癌患者にみられる異型気道上皮と分子生物学的に異なるか否かを検討した. 〔対象と方法〕対象は1993年5月以降当施設で得られたTBB標本中に異型気道上皮を有した103症例で, 3p, 9pのLOH(loss of heterozygosity)の有無をマイクロサテライトマーカーを用いて検討した. また, K-ras geneの変異についても検討した. 〔結果〕3p21.3のLOHの頻度は細胞異型度の進行に伴って増加し, 3p14.2(FHIT)は喫煙歴との相関を認めた. 良性肺疾患の中でも特にIPF患者では9p22(IFNA)のLOHを高率に認め,...

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Published in気管支学 Vol. 22; no. 7; p. 566
Main Authors 井上孝治, 中西洋一, 高山浩一, 出水みいる, 原田大志, 肝付兼仁, 綿屋洋, 南貴博, 原信之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 25.11.2000
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ISSN0287-2137

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Summary:〔目的〕良性肺疾患にみられる異型気道上皮が, 肺癌患者にみられる異型気道上皮と分子生物学的に異なるか否かを検討した. 〔対象と方法〕対象は1993年5月以降当施設で得られたTBB標本中に異型気道上皮を有した103症例で, 3p, 9pのLOH(loss of heterozygosity)の有無をマイクロサテライトマーカーを用いて検討した. また, K-ras geneの変異についても検討した. 〔結果〕3p21.3のLOHの頻度は細胞異型度の進行に伴って増加し, 3p14.2(FHIT)は喫煙歴との相関を認めた. 良性肺疾患の中でも特にIPF患者では9p22(IFNA)のLOHを高率に認め, k-ras geneのcodon12, 13にもmutationが認められた. 〔考察〕良性肺疾患の異型気道上皮においても3p, 9pのLOHがみられたことから, 原疾患にかかわらず異型気道上皮においては遺伝子異常が存在し, 肺発癌の過程を理解する上で重要と考えられた. IPF患者でより多くの異常を認めたことは, 高率に肺癌を合併する疫学的特徴に対する分子生物学的根拠となるものと考えられた.
ISSN:0287-2137