スピーチカニューレ抜去により誤嚥性肺炎を発症した頸髄損傷の1例

「症例」53歳, 男性. 「病名」頸髄損傷. 「障害名」C4完全四肢麻痺. 「起始・経過」平成11年3月, 階段より転落し受傷. 他院入院, C4・5前方固定術, 気管切開施行. 平成12年10月リハビリテーション目的にて当院へ転院. 受傷から誤嚥性肺炎の既往はなかった. 「当院入院時現症」気管切開にてカフなしスピーチカニューレ挿入. むせずに全粥・軟菜を摂取. 喉頭可動性低下あり, 1回の嚥下量が少なく, 食事に40~50分要した. 「経過」スピーチカニューレのバルブ試験閉鎖後スピーチカニューレを抜去. 気切孔の自然閉鎖傾向が認められず, 気管切開孔閉鎖術を予定. 手術予定日前日に誤嚥性肺炎...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 38; no. 12; p. 1000
Main Authors 菅原英和, 瀬田拓, 高田耕太郎, 音琴勝, 鄭健錫, 稲田晴生, 宮野佐年
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.2001
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ISSN0034-351X

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Summary:「症例」53歳, 男性. 「病名」頸髄損傷. 「障害名」C4完全四肢麻痺. 「起始・経過」平成11年3月, 階段より転落し受傷. 他院入院, C4・5前方固定術, 気管切開施行. 平成12年10月リハビリテーション目的にて当院へ転院. 受傷から誤嚥性肺炎の既往はなかった. 「当院入院時現症」気管切開にてカフなしスピーチカニューレ挿入. むせずに全粥・軟菜を摂取. 喉頭可動性低下あり, 1回の嚥下量が少なく, 食事に40~50分要した. 「経過」スピーチカニューレのバルブ試験閉鎖後スピーチカニューレを抜去. 気切孔の自然閉鎖傾向が認められず, 気管切開孔閉鎖術を予定. 手術予定日前日に誤嚥性肺炎発症. 以前より嚥下しづらくなり, 錠剤の嚥下が困難になった. 嚥下造影にて, 喉頭可動性低下・喉頭蓋の閉鎖不全・声門上腔へのバリウムの流入を認めた. スピーチカニューレ抜去による声門下気道内圧のリークが誤嚥性肺炎の引き金となった疑いが強いため, 気切孔周囲皮膚を試験的に閉鎖後, 2回目のVFを施行し, 誤嚥消失を確認した. 癒着剥離を含む気管切開孔閉鎖術を施行し, 喉頭可動性の改善・食事時間の短縮(25分)を認め, その後誤嚥性肺炎の再発も認めなかった. 「考察」前方固定術と気管切開術のある四肢麻痺に対しスピーチカニューレ抜去を施行したことにより, 声門下気道内圧のリークが生じ, 誤嚥性肺炎が発症したと考えられた. 気管切開孔閉鎖術により声門下気道内圧のリークが消失し, 癒着剥離により喉頭可動性が向上し, 誤嚥性肺炎の消失および食事時間の短縮につながったと考えられた.
ISSN:0034-351X