献血施設と医療機関との連携について 呼吸停止をきたした重症VVRの経験から
献血に伴う副作用にVVR(血1管迷走神経反射)がある. VVRは時に転倒事故等につながることがあるが, ほとんどの場合安静臥床により回復するため, 過去に献血者の生命が脅かされるような事例の発生はなかった. 今回, 当献血ルームにおいて採血終了後にVVRを発症し, その後, 呼吸停止をきたした献血者に救急処置を行い, 病院に搬送して救命できた症例を経験したので報告する. 献血者は既献血回数8回の20歳女性で, 平成14年11月8日に当献血ルームに来所された. 血漿献血終了後にVVRを発症, 安静臥床, 水分補給したが, およそ50分後に急激な血圧低下, 意識消失, 呼吸停止状態となった. ただ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 252 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 献血に伴う副作用にVVR(血1管迷走神経反射)がある. VVRは時に転倒事故等につながることがあるが, ほとんどの場合安静臥床により回復するため, 過去に献血者の生命が脅かされるような事例の発生はなかった. 今回, 当献血ルームにおいて採血終了後にVVRを発症し, その後, 呼吸停止をきたした献血者に救急処置を行い, 病院に搬送して救命できた症例を経験したので報告する. 献血者は既献血回数8回の20歳女性で, 平成14年11月8日に当献血ルームに来所された. 血漿献血終了後にVVRを発症, 安静臥床, 水分補給したが, およそ50分後に急激な血圧低下, 意識消失, 呼吸停止状態となった. ただちに人工呼吸および心マッサージを行い, 救急車にて医療機関へ搬送した. 病院で気管内挿管され, その後自発呼吸が回復した. 後に, この献血者は過呼吸症候群などのため通院治療中で, 当日も治療薬を内服していたことが判明した. 病院での諸検査の結果, 治療薬のひとつの影響が大きかったのではないかと思われた. この症例は, 問診時に, たびたび失神発作を起こしていることや治療薬を服用していることの申告がなかったため, いつもに比べ元気のない様子であったが採血を行って発生した重傷の副作用であるが, しかし, 原因の如何に関わらず, こういう事態に遭遇した場合にはとにかく献血者を救命しなくてはならない. 今回の経験から問診の重要性と採血適否判断の困難さを再認識した. また, 搬送されたICUの担当医が献血に理解のある医師で適切に治療されたためトラブルにもならず, むしろ献血者や家族から感謝された. 献血施設と救命救急医療を行う医療機関との連携の重要性についても再認識した. 献血者は現在, もとの疾患について以前から通院していた病院において治療を続けているということであるが, 救急処置にあたった献血ルームのスタッフの中には極度の緊張を強いられたために, 後日, 体調不良を訴えるものもいた. |
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ISSN: | 0546-1448 |