緊急時輸血システムの導入と問題点

【目的】当院では, 緊急時に輸血検査が不十分の状態で行う輸血に際して, 従来, 主治医の自筆による承諾書を得ていた. 救急医療センターでの輸血の合理化と迅速化をはかるため, 1998年3月より緊急時輸血システムを導入した. 今回その運用と問題点について報告する. 【方法】緊急輸血オーダーは, 救急医療センターのみを対象として, 患者のABO式血液型判定だけで同型を出庫する場合を[緊急], 血液型判定をも待てず, O型赤血球製剤を出庫する場合を[最緊急]とし, 申込用紙上に簡易化した輸血同意書も含めた専用用紙を作成した. また, 1回の出庫は最大10単位までとした. 【結果および考察】3月~10...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 298
Main Authors 須永和代, 新井盛夫, 高橋陽子, 早川瑞穂, 久野浩史, 中津川庸子, 市川喜美子, 島英明, 腰原公人, 福武勝幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】当院では, 緊急時に輸血検査が不十分の状態で行う輸血に際して, 従来, 主治医の自筆による承諾書を得ていた. 救急医療センターでの輸血の合理化と迅速化をはかるため, 1998年3月より緊急時輸血システムを導入した. 今回その運用と問題点について報告する. 【方法】緊急輸血オーダーは, 救急医療センターのみを対象として, 患者のABO式血液型判定だけで同型を出庫する場合を[緊急], 血液型判定をも待てず, O型赤血球製剤を出庫する場合を[最緊急]とし, 申込用紙上に簡易化した輸血同意書も含めた専用用紙を作成した. また, 1回の出庫は最大10単位までとした. 【結果および考察】3月~10月までの8ヶ月間に[緊急]輸血申込が14件, [最緊急]輸血申込は2件あった. 出庫に要する時間は, [緊急]で10分以内, [最緊急]で3分以内であった. 過去5年間の緊急時輸血は29件で, 年平均5.8件であったのと比較すると, 急増している. そこで, 主治医に経過記録書を提出してもらい, 各症例での輸血の緊急性を遡及的に検討した. [緊急]輸血の適応はなかったと考えられる症例が3件あり, [最緊急]輸血申込の2件は, [緊急]輸血申込で対応可能と考えられた. 専用用紙の存在により, 安易に申込まれている可能性があり, このシステムが救急医療センターの医師に, 正しく理解されていないことに起因するものと思われた. そこで, 現在輸血部では, 漫然と輸血のオーダーに応じるだけではなく, 個々の症例の病態を把握して, 輸血部の見解を主治医宛てにレポートしている. 今後は, 緊急時輸血に関し, 救急医療センターとさらに綿密な情報交換が必要であると思われた.
ISSN:0546-1448