肝細胞に対する酸素と麻酔薬の影響

肝は重要臓器でありながら, 動脈血の供給は全供血量のわずか20~40%にしかすぎないことが知られている. また細胞内のミトコンドリア周辺はわずかP_O2 2~10torrであることも知られた事実である. 従って, この低張酸素が細胞にとって適したものであるか, あるいは低すぎる状態におかれているのかは, 大いに興味の深いことである. この報告は, 肝細胞の酸素張力と麻酔薬による影響を知るために, 実験的にラット分離肝細胞を作成して検討を加えた. 実験方法 Berry変法によって, 門脈よりEDTA, コラジナーゼ含有のKrebs-Ringer燐酸緩衝液(pH7.4)を注入し, 上大静脈より排液...

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Published in蘇生 Vol. 2; pp. 67 - 68
Main Authors 天方義邦, 沢井敏安, 松下嘉明, 則岡美保子, 石橋俊元
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.05.1984
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ISSN0288-4348

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Summary:肝は重要臓器でありながら, 動脈血の供給は全供血量のわずか20~40%にしかすぎないことが知られている. また細胞内のミトコンドリア周辺はわずかP_O2 2~10torrであることも知られた事実である. 従って, この低張酸素が細胞にとって適したものであるか, あるいは低すぎる状態におかれているのかは, 大いに興味の深いことである. この報告は, 肝細胞の酸素張力と麻酔薬による影響を知るために, 実験的にラット分離肝細胞を作成して検討を加えた. 実験方法 Berry変法によって, 門脈よりEDTA, コラジナーゼ含有のKrebs-Ringer燐酸緩衝液(pH7.4)を注入し, 上大静脈より排液して灌流した後, 肝細胞を分離した. 純酸素を吹きこみ, 約70%になった時期に密封したものを高酸素群とした. 純窒素を吹きこみ, 約7%の酸素濃度になった時期に密封したものを低酸素群とした. 培養液上清を採取し, GOT, GPTを測定した. 培養時間は30分間とした. 麻酔薬は3種類使用した. 実験結果 1) 酸素の影響 高酸素群でGOTの逸脱が有意に大であった. 2) 麻酔薬の影響 ハロセン, メトキシフルレン, エンフルレンのいずれも, 高酸素群でGOTの逸脱が有意に大であった. 3) 低酸素群の影響 GOT, GPTともに増加傾向が認められたが, 有意ではなかった. 結語 肝細胞は低張力よりも, むしろ高張力酸素下で障害を受けるものである.
ISSN:0288-4348