縊頸例の検討
昭和56年1月より昭和61年8月まで経験した縊頸例7例について報告した. 症例は2~70歳の男性3例女性4例で, 2歳の症例は事故によるものであったが, 他の6例は自殺企図による縊頸であり, 3例に躁うつ病などの精神科的疾患の既往がみられた. 7例中5例は後遺症を残さずに社会復帰できたが, そのうち4例は救急隊が現場に到着する前に何らかの蘇生術を受けていた. 残りの1例は救出時すでに自発呼吸が認められていた. 死亡した2例中1例は来院時心停止であり, 種々の治療により心拍動は再開したものの, 4日目に死亡した. この例は現場で蘇生術が行われていなかったが, もし行われていれば救命できたかも知れ...
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Published in | 蘇生 Vol. 5; p. 86 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.04.1987
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 昭和56年1月より昭和61年8月まで経験した縊頸例7例について報告した. 症例は2~70歳の男性3例女性4例で, 2歳の症例は事故によるものであったが, 他の6例は自殺企図による縊頸であり, 3例に躁うつ病などの精神科的疾患の既往がみられた. 7例中5例は後遺症を残さずに社会復帰できたが, そのうち4例は救急隊が現場に到着する前に何らかの蘇生術を受けていた. 残りの1例は救出時すでに自発呼吸が認められていた. 死亡した2例中1例は来院時心停止であり, 種々の治療により心拍動は再開したものの, 4日目に死亡した. この例は現場で蘇生術が行われていなかったが, もし行われていれば救命できたかも知れない. 死亡した他の1例は, 来院時すでに死後1時間程経過していたと想像され死体検案となった. ICUへ入室させた6例についてはステロイド, グリセロールなどの薬物療法を行ったが, 3例に対し1~24回の高圧酸素療法を併用し, 意識の改善を認めた. これら7例のうち1例は, 縊頸の現場に麻酔科医が遭遇するというきわめてまれな症例であり, 発見時心停止でありながら, 適切な蘇生術により救命できた貴重な症例であった. また別の1例は事故で縊頸の状態に陥ってしまったが, 母親が最近テレビで観た蘇生術を憶えておりただちに施行したため, 救命されたと思われる症例であった. 以上のような症例より, 救急医療における現場での蘇生術の重要さを改めて認識させられた. われわれは地域の医療従事者, 養護教員, 消防隊員, ボーイスカウトなどに蘇生術の指導を行っているが, 一般人への普及にさらに務めねばならないと思われた. また高圧酸素療法は蘇生後の意識障害の改善に有効であると思われた. |
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ISSN: | 0288-4348 |