新生児科領域における自己血輸血
新生児の自己血輸血には, 臍帯結紮時期を遅延させることで胎盤血を児に輸血する臍帯遅延結紮法, 臍帯をミルキングまたはストリッピングすることで児に輸血する方法, および体外に貯血後に輸血する自己臍帯血輸血療法とがある. 臍帯遅延結紮法や臍帯のミルキング法については, 出生後の呼吸, 循環動態の安定化に有用であったと報告されているが, 手技が一定しにくいこと, 児への輸血量が不明であること, 循環負荷や頭蓋内出血が危惧されることなどから, その施行に関して今なお賛否両論がある. 一方, 自己臍帯血輸血療法は, 未熟児貧血および出生前診断された新生児外科疾患の出生後早期の外科治療の際の輸血療法として...
Saved in:
Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 211 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
Cover
Summary: | 新生児の自己血輸血には, 臍帯結紮時期を遅延させることで胎盤血を児に輸血する臍帯遅延結紮法, 臍帯をミルキングまたはストリッピングすることで児に輸血する方法, および体外に貯血後に輸血する自己臍帯血輸血療法とがある. 臍帯遅延結紮法や臍帯のミルキング法については, 出生後の呼吸, 循環動態の安定化に有用であったと報告されているが, 手技が一定しにくいこと, 児への輸血量が不明であること, 循環負荷や頭蓋内出血が危惧されることなどから, その施行に関して今なお賛否両論がある. 一方, 自己臍帯血輸血療法は, 未熟児貧血および出生前診断された新生児外科疾患の出生後早期の外科治療の際の輸血療法として, 最近注目され試みられている. しかし, 臍帯血の採取時および保存期間中の血液汚染や輸血製剤としての品質異常が危惧される. また, 臍帯血バンクのごとく, 採取から保管, 品質管理までの血液管理システムも規約もない. また, 臍帯血を新生児の自己血輸血として用いた実績もほとんどない. したがって, 新生児への自己血輸血療法として一般化するには, まずその有用性を示すとともに, 輸血安全性を高めるための種々の検討が必要である. そこで, 当院では低出生体重児に対する臍帯血自己血赤血球輸血療法実施に向けて, 低出生体重児への輸血必要量や輸血時期の現状を調査し, さらに, 当院で実施してきた自己血輸血の採取, 分離, 保管法でMAP加臍帯血赤血球を得たのち, 細菌培養に加えて, 赤血球および血漿成分の変化を同様に採取した成人血と比較し, 採取後4週間までは両者に有意な差異のないことを確認した. その後, 保管, 管理体制を確立したうえで, 2001年10月に「低出生体重児に対する臍帯血自己血赤血球輸血療法」を産婦人科と輸血部との共同で本学倫理委員会に申請し, 承認を得て, 臍帯血自己血赤血球輸血療法を開始した. そこで, われわれの取り組みを紹介し, すでに欧米および本邦で実施されているこの治療法の現状と今後の問題点について報告する. |
---|---|
ISSN: | 0546-1448 |