CAPD患者の腹膜限外濾過動態 経毛細血管限外濾過能およびリンパ吸収能について

CAPD患者の限外濾過動態を調べるため積算経毛細管限外濾過量 (TCUFV) とリンパ吸収量を30名の患者で測定し, どの因子が限外濾過不全に最も関与しているかを調べた. TCUFVとリンパ吸収量は腹膜平衡試験時にD/Pクレアチニン, アルブミン漏出量とともに測定した. 30名中7名は限外濾過不全の状態にあり, そのうち3名は腹膜透過能亢進を伴うTCUFVの低下が, 3名はリンパ吸収量の亢進が, 1名は両者の合併が濾過不全の原因と思われた. TCUFV, リンパ吸収量およびクレアチニンクリアランスの30名の平均値は各々, 2.1, 1.7, 5.1ml/minであり, リンパ吸収率は経毛細管ク...

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Published in日本透析療法学会雑誌 Vol. 26; no. 8; pp. 1387 - 1392
Main Authors 志村, 哲, 熊野, 和雄, 高木, 裕, 横田, 眞二, 酒井, 糾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本透析医学会 28.08.1993
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ISSN0911-5889
1884-6211
DOI10.4009/jsdt1985.26.1387

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Summary:CAPD患者の限外濾過動態を調べるため積算経毛細管限外濾過量 (TCUFV) とリンパ吸収量を30名の患者で測定し, どの因子が限外濾過不全に最も関与しているかを調べた. TCUFVとリンパ吸収量は腹膜平衡試験時にD/Pクレアチニン, アルブミン漏出量とともに測定した. 30名中7名は限外濾過不全の状態にあり, そのうち3名は腹膜透過能亢進を伴うTCUFVの低下が, 3名はリンパ吸収量の亢進が, 1名は両者の合併が濾過不全の原因と思われた. TCUFV, リンパ吸収量およびクレアチニンクリアランスの30名の平均値は各々, 2.1, 1.7, 5.1ml/minであり, リンパ吸収率は経毛細管クレアチニンクリアランスの約25%を占めていた. 濾過不全例ではそうでない例に比べてTCUFVは低値を, リンパ吸収量は高値を示す傾向にあったが, いずれの群においてもこれらの2因子は大きくばらついており両群間に有意の差はなかった. TCUFVとリンパ吸収量の間には正の相関 (r=0.798) を認めた. 濾過不全群ではTCUFVに比してリンパ吸収量が相対的に大きくこのことが濾過不全の一因と考えられた. 限外濾過量とTCUFVの間には正の相関, リンパ吸収量との間には負の相関がみられた. TCUFVとD/Pクレアチニン間には負の相関がみられた. リンパ吸収量とD/Pクレアチニン間には相関はなかったがアルブミン漏出量との間には負の相関がみられた. 腹腔内圧の指標となる貯留液量/体表面積とリンパ吸収量の間にも相関はなかった. TCUFV, リンパ吸収量いずれも体重, 年齢, CAPD期間, 腹膜炎発生回数と相関しなかった. 以上より, リンパ吸収量はTCUFVとともに限外濾過量を規定する重要な因子であり, その異常亢進は溶質除去能にも大きな影響を与えることが判明した. 今後, いかにリンパ吸収量を減少させるかは重要な課題と思われる.
ISSN:0911-5889
1884-6211
DOI:10.4009/jsdt1985.26.1387