門脈圧亢進症を伴った瘢痕肝と考えられる1例

門脈圧亢進症を伴った瘢痕肝と考えられる1例を報告する.症例は35歳男性で肝機能障害の精査を目的に入院.5年前まで多量のアルコール摂取の既往があった.入院時,軽度の肝機能障害を認めたがウイルスマーカー,自己抗体などいずれも陰性.エコー,CTにて肝右葉萎縮,左葉腫大,側副血行路の発達が認められた.腹腔鏡検査では右葉は著明に萎縮し,左葉は中央に再生結節を有する瘢痕肝を呈していた.左葉の再生結節からの生検組織は中等度のアルコール性肝線維症で小葉構造は保たれていた.腹部血管造影では肝左葉腫大,右葉萎縮がみられ,また門脈拡張,食道静脈瘤をはじめとする側副血行路の発達といった門脈圧亢進症の所見を認めたが特異...

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Published in肝臓 Vol. 35; no. 6; pp. 455 - 460
Main Authors 桜井, 幸弘, 太田, 雅弘, 馬場, 俊之, 山口, 和克, 池上, 文詔, 寺田, 光宏, 松原, 康朗, 伊藤, 慎芳, 打越, 敏之, 多賀須, 幸男, 有井, 研司, 斎藤, 光浩, 安部, 孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.06.1994
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.35.455

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Summary:門脈圧亢進症を伴った瘢痕肝と考えられる1例を報告する.症例は35歳男性で肝機能障害の精査を目的に入院.5年前まで多量のアルコール摂取の既往があった.入院時,軽度の肝機能障害を認めたがウイルスマーカー,自己抗体などいずれも陰性.エコー,CTにて肝右葉萎縮,左葉腫大,側副血行路の発達が認められた.腹腔鏡検査では右葉は著明に萎縮し,左葉は中央に再生結節を有する瘢痕肝を呈していた.左葉の再生結節からの生検組織は中等度のアルコール性肝線維症で小葉構造は保たれていた.腹部血管造影では肝左葉腫大,右葉萎縮がみられ,また門脈拡張,食道静脈瘤をはじめとする側副血行路の発達といった門脈圧亢進症の所見を認めたが特異的な血管異常ははっきりしなかった.これらより本症例の病態としてアルコールによる瘢痕肝から門脈圧亢進症を生じた可能性,または特発性門脈圧亢進症から瘢痕肝が生じた可能性が考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.35.455