自家骨髄幹細胞含浸人工真皮を併用した難治性皮膚潰瘍の治療
目的:今回われわれは下肢の慢性末梢動脈閉塞をきたすBuerger病, 閉塞性動脈硬化症(ASO), 糖尿病などに合併した下肢難治性潰瘍に対し, 自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法とともに, 同細胞を含浸させた人工真皮を潰瘍面に移植することにより創面の良好な治癒を認めたので報告する. 方法:対象は現在のいかなる内科的, 外科的治療法にても治癒しない最重症の慢性閉塞性末梢血管疾患に難治性潰瘍を合併した3例(ASO3例, うち1例は糖尿病を合併). 全身麻酔下にて患者腸骨より骨髄液を採取し, 遠心分離装置を用いて幹細胞が最も存在する単核球, 血小板層を分離, 濃縮した. 潰瘍面のデブリードマンの後...
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Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 600 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
15.12.2003
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Summary: | 目的:今回われわれは下肢の慢性末梢動脈閉塞をきたすBuerger病, 閉塞性動脈硬化症(ASO), 糖尿病などに合併した下肢難治性潰瘍に対し, 自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法とともに, 同細胞を含浸させた人工真皮を潰瘍面に移植することにより創面の良好な治癒を認めたので報告する. 方法:対象は現在のいかなる内科的, 外科的治療法にても治癒しない最重症の慢性閉塞性末梢血管疾患に難治性潰瘍を合併した3例(ASO3例, うち1例は糖尿病を合併). 全身麻酔下にて患者腸骨より骨髄液を採取し, 遠心分離装置を用いて幹細胞が最も存在する単核球, 血小板層を分離, 濃縮した. 潰瘍面のデブリードマンの後, 人工真皮(テルモ社, テルダーミス)の内側コラーゲン層に抽出した細胞の一部を浸透させ潰瘍面に縫着した. 最後に下腿, 足筋肉内に約80箇所細胞注入した. 結果:全例において下肢血行の良好な再生と併せて創面の良好な肉芽形成を認め, うち1例にその後植皮術を施行し80%以上の生着をみた. 残りの2例も今後近いうちに植皮予定である. 結語:自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法と自己骨髄幹細胞含浸人工真皮移植術を同時に一期的に施行することにより, 虚血症状の改善とともに潰瘍の良好な治癒を認めた. 今後このような血管再生治療技術を駆使した治療法は, これまで治癒せしめることが不可能であった難治性皮膚潰瘍の新しい治療法になる可能性を有すると考えられた. |
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ISSN: | 1345-4676 |