血友病患者ならびに人血漿分画製剤におけるC型肝炎ウイルス(HCV)抗体の検討

現時点では非A非B型肝炎ウイルス(NANBV)に対するチェックが全くなされていない多人数の血漿から製造される人血漿分画製剤や, このような凝固因子製剤を輸注される血友病患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染状況を知る目的で, HCV抗体について検討した. 【対象・方法】血友病患者38例(平均32.9歳, 5~66歳)の血漿/血清, 免疫グロブリン(IG)製剤5社43ロット, アルブミン(AL)製剤3社65ロット, 加熱人血漿蛋白製剤(PPF)1社2ロット, 凝固第VIII因子(VIII)製剤2社5ロット, 凝固第IX因子(IX)製剤2社3ロット, フイブリノゲン(Fbg)製剤1社4ロット...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 385
Main Authors 大久保進, 山岡学, 岡山桂子, 石田萌子, 安永幸二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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ISSN0546-1448

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Summary:現時点では非A非B型肝炎ウイルス(NANBV)に対するチェックが全くなされていない多人数の血漿から製造される人血漿分画製剤や, このような凝固因子製剤を輸注される血友病患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染状況を知る目的で, HCV抗体について検討した. 【対象・方法】血友病患者38例(平均32.9歳, 5~66歳)の血漿/血清, 免疫グロブリン(IG)製剤5社43ロット, アルブミン(AL)製剤3社65ロット, 加熱人血漿蛋白製剤(PPF)1社2ロット, 凝固第VIII因子(VIII)製剤2社5ロット, 凝固第IX因子(IX)製剤2社3ロット, フイブリノゲン(Fbg)製剤1社4ロットについて, HCV抗体をオルソ社(カイロン社開発)の組み替え遺伝子を抗原とするELISAキットを用いて測定した. Cut off値は0.45とした. 【結果】1)血友病患者のHCV抗体陽性率は33/38例(86.8%)であった. 2)HBs抗原/抗体の陽性率は27/30例(90.0%)で, 同陽性, 陰性例におけるHCV抗体陽性率はそれぞれ24/27例(88.9%), 3/3例(100%)と差は認めなかった. 3)HIV抗体陽性例, 陰性例におけるHCV抗体陽性率はそれぞれ17/18例(94.4%), 16/20例(80.0%)と差は認めなかった. 4)GPT値は, 〔HBs(+), HCV(+)〕群55.5±41.9, 〔(+), (-)〕群20.3±8.4, 〔(-), (+)〕群110.7±92.5IU/Lで, 高値例(35IU/L以上)はそれぞれの群で14/24例(58.3%), 0/3例(0%), 2/3例(66.7%)と, HCV抗体陽性例に肝機能異常例が多かった. 5)2ヵ月以上の間隔で2回以上測定できた患者におけるHCV抗体の推移は, (+)→(+)が16/21例(76.2%)と最も多く, (-)→(-)が1例, (+)→(-)が2例であったが, (-)→(+)例が2例みられた. この2例は何れも血友病Aで, 1987年では陰性であったが, 加熱処理VIII製剤使用中の1988年に陽性となった. 6)人血漿分画製剤におけるHCV抗体の陽性率は, IG製剤95.3%(41/43ロット, AL製剤0%(0/65ロット), PPF100%(2/2ロット), VIII製剤40.0%(2/5ロット), IX製剤0%(0/3ロット), Fbg製剤100%(4/4ロット)であった. 【結論】人血漿分画製剤の原料血漿についても早急にHCV抗体のチェック体制を確立するべきであると考えられた.
ISSN:0546-1448