ベンジルクロライドによる齲蝕原因菌からの染色体DNAの抽出

〔目的〕齲蝕原因菌の検出・同定法において, 以前, 我々は, 迅速かつ簡便な齲蝕原因菌の検出・同定法の開発を目的に, DNAプローブ法やPCR法による齲蝕原因菌の検出・同定法について報告してきた. これらのDNAプローブ法やPCR法に不可欠な染色体DNAの抽出に用いた塩化セシウム(CsCl)による染色体DNAの抽出は, 精製精度に優れ, 非常に高純度の染色体DNAが得られるが, 多数の齲蝕原因菌の臨床分離株を処理するには適さない. そこで今回, 我々は, より迅速で簡便な, ベンジルクロライド(BzCl)による染色体DNAの抽出法を考案し, その有用性について検討した結果について報告する. 〔...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 19; no. 4; pp. 415 - 416
Main Authors 伊田博, 五十嵐武, 山本綾子, 後藤延一, 佐々竜二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 30.12.1999
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Summary:〔目的〕齲蝕原因菌の検出・同定法において, 以前, 我々は, 迅速かつ簡便な齲蝕原因菌の検出・同定法の開発を目的に, DNAプローブ法やPCR法による齲蝕原因菌の検出・同定法について報告してきた. これらのDNAプローブ法やPCR法に不可欠な染色体DNAの抽出に用いた塩化セシウム(CsCl)による染色体DNAの抽出は, 精製精度に優れ, 非常に高純度の染色体DNAが得られるが, 多数の齲蝕原因菌の臨床分離株を処理するには適さない. そこで今回, 我々は, より迅速で簡便な, ベンジルクロライド(BzCl)による染色体DNAの抽出法を考案し, その有用性について検討した結果について報告する. 〔方法〕染色体DNAの抽出は, Streptococcus mutans株とStreptococcus sobrinus株をCsCl法とBzCl法で抽出したものを実験に使用した. DNAプローブには, S.mutans同定用dexAプローブとS.sobrinus同定用dexローブを使用し, また, PCRプライマーは, S.mutansに特異的なSD1-SD2プライマー, およびS.sobrinusに特異的なSOF1-SOR2プライマーを用いてBzCl法の有用性について検討した. 〔結果と考察〕BzClによる染色体DNAの抽出は, 操作性と所要時間において, 小容量の試料からの染色体DNAの抽出が可能であり, 簡単な操作で短時間にDNA抽出ができた. 抽出されたDNAの純度においては, CsClによる染色体DNAの抽出とほぼ同程度の純度が得られた. また, 抽出DNAの有用性については, BzCl法による染色体DNAは, DNAプローブによるハイブリダイゼーション法やPCR法の鋳型DNAとして使用可能である. これらのことから, BzC1法による染色体DNAの抽出は, 迅速かつ簡便で, 多数の齲蝕原因菌の臨床分離株からの染色体DNAの抽出に有用である.
ISSN:0285-922X