腹部CTで広範な造影剤漏出を認めた膵を貫通する腹部刺創, 出血性ショックの一例

救急外来に緊急に搬送される腹腔内を穿通する腹部刺創例ではすでにショック状態に陥っている例も多く, 迅速な診断と開腹術での周到な全身管理が要求される. 今回最近経験した腹部刺創例を報告する. 21歳女性, 本年6月某日午前0時ころ, 出刃包丁にて腹部を刺創, 近医を経由して, 午前1時前後に, 当院へ救急車にて搬送された. 来院時, 意識やや混濁, 顔面蒼白, 収縮期血圧70mmHg, 心拍数150-160/分, Hb 5.5g/dl, Ht 16.2%, 血小板12.2万/μl, TP 4.0g/dl, Alb 2.7g/dl. 救急外来にてクロスマッチの後輸血開始, 造影CT施行した. 肝,...

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Published in蘇生 Vol. 17; no. 3; p. 200
Main Authors 川瀬恭, 貝沼関志, 原田亜希子, 大原義隆, 山田守正, 浅野理佐, 広瀬紀子, 三宅聰行, 新井豊久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1998
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Summary:救急外来に緊急に搬送される腹腔内を穿通する腹部刺創例ではすでにショック状態に陥っている例も多く, 迅速な診断と開腹術での周到な全身管理が要求される. 今回最近経験した腹部刺創例を報告する. 21歳女性, 本年6月某日午前0時ころ, 出刃包丁にて腹部を刺創, 近医を経由して, 午前1時前後に, 当院へ救急車にて搬送された. 来院時, 意識やや混濁, 顔面蒼白, 収縮期血圧70mmHg, 心拍数150-160/分, Hb 5.5g/dl, Ht 16.2%, 血小板12.2万/μl, TP 4.0g/dl, Alb 2.7g/dl. 救急外来にてクロスマッチの後輸血開始, 造影CT施行した. 肝, 脾, 腎の損傷は否定的であったが, 上腹部腸間膜近辺に広範な造影剤の漏出を認めた. 緊急手術予定し, ただちに手術室入室. 入室時, 意識混濁, 呼吸減弱, 収縮期血圧, 触診で30mmHg前後. ケタミン, サクシニルコリンにて気管内挿管, 右大腿動脈より動脈圧カニューラ, 左大腿静脈より8.5Frシース(輸血用), 右内頚静脈よりダブルルーメン中心静脈用カテーテルを挿入, 急速輸血とドーパミンの持続投与を行った. はじめ収縮期血圧は40mmHg前後, CVPは10-15mmHgであったがウリナスタチン10万単位静注後より収縮期血圧は70mmHg以上, CVPは5mmHg前後となった. 腹腔内出血多量, 創は膵頭部を貫通していたため, PpPDを行った. 術中出血は7018ml, 輸血は33単位, FFP10単位施行した. 同日午前11時前後に, 経鼻挿管として救命救急センター内HCU入室. 術後麻酔覚醒とともに意識清明となり, 血液ガス所見良好で, 同日午後, 人工呼吸器から離脱, 抜管した. 血小板2.5万/μlに対し濃厚血小板血漿, ドナー血にて, 膵損傷に対してメシル酸ガベキサート, ウリナスタチン, 出血傾向, DIC予防にアンチトロンビンIII, FFP, 感染予防にイミペナムをそれぞれ投与した. 術後1週間目の現在, 時々発熱が見られること以外は, 全身状態は安定している. 本症例から, 腹部刺創例におけるCT診断, 緊急手術と周術期全身管理について考察し, 報告する.
ISSN:0288-4348