肺胞蛋白症の3例

肺胞蛋白症は肺胞腔内にPAS染色陽性の蛋白様物質が貯留する疾患として1958年にRosenらにより初めて報告され, 本邦でも約100例がこれまで報告されている. 我々はこれまで3例の肺胞蛋白症を経験したので, 若干の考察を加え, 報告する. 症例1:47歳, 女性, 主婦. 昭和61年12月より軽度の労作時呼吸困難と咳漱, 喀痰が出現し, 症状増悪するため近医受診し, 胸部XPにて間質性肺炎を疑われ入院となった. 症例2:38歳, 男性. 造船所勤務. 平成4年10月, 成人病検診にて, 胸部異常影を指摘され, 翌年も同様の指摘を受け, 陰影は増強していたため, 精査のため入院した. 自覚症状...

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Published in気管支学 Vol. 20; no. 2; p. 191
Main Authors 谷本安, 片岡幹男, 松尾潔, 高尾和志, 足羽敦子, 佐久川亮, 藤森良昭, 武田勝行, 上岡博, 原田実根, 多田慎也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 25.03.1998
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ISSN0287-2137

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Summary:肺胞蛋白症は肺胞腔内にPAS染色陽性の蛋白様物質が貯留する疾患として1958年にRosenらにより初めて報告され, 本邦でも約100例がこれまで報告されている. 我々はこれまで3例の肺胞蛋白症を経験したので, 若干の考察を加え, 報告する. 症例1:47歳, 女性, 主婦. 昭和61年12月より軽度の労作時呼吸困難と咳漱, 喀痰が出現し, 症状増悪するため近医受診し, 胸部XPにて間質性肺炎を疑われ入院となった. 症例2:38歳, 男性. 造船所勤務. 平成4年10月, 成人病検診にて, 胸部異常影を指摘され, 翌年も同様の指摘を受け, 陰影は増強していたため, 精査のため入院した. 自覚症状は認めていない. 症例3:63歳, 男性, 会社員. 平成8年11月頃より労作時呼吸困難を自覚するようになり, 翌年の会社の定期検診にて胸部異常影を指摘され, 精査のため入院した. 入院時現症では3例とも, 小水泡性ラ音が聴取された. 入院後気管支鏡を施行し, その時の回収肺胞洗浄液は3例とも, 乳白色白濁しており, 細胞分画ではリンパ球増多(それぞれ25.1%, 60.4%, 25.2%)が認められた. 洗浄液のリン脂質分画では第1例, 第2例目がsphyngomyelin, 第3例目はphosphatidyl cholineが優位であった. 同時に施行されたTBLBにて, 肺胞腔内を好酸性, PAS陽性物質が満たしており, 肺胞蛋白症と診断した. 3例とも, 全麻下肺洗浄を行い, 現在自覚症状も消失して, 外来通院中である. 3例の肺胞蛋白症を経験したので, 治療, 予後を含め報告する.
ISSN:0287-2137