放射線照射血輸血の協力状況について

目的:近年, 輸血用血液製剤に含まれるドナー由来のリンパ球に由来する移植片対宿主病(GVHD)の発症が重篤な輸血後副作用として問題となっている. GVHD発症の予防法として, 血液製剤のリンパ球の不活化が唯一有効な手段であると考えられている. 白血球の不活化は, 輸血用血液にγ線またはX線を照射し, リンパ球のDNAを損傷させることによると考えられている. 輸血学会においても平成4年1月に「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン」を提示し, GVHD発症の予防を推進している. 当センターにおいても, 平成6年7月から, 病院に納品された血液製剤に対し, γ線を照射する...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 41; no. 1; pp. 95 - 96
Main Authors 中村定生, 佐野薫, 平井耕作, 古田求, 清水哲夫, 中嶋武, 神谷忠, 小久保幸雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1995
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:目的:近年, 輸血用血液製剤に含まれるドナー由来のリンパ球に由来する移植片対宿主病(GVHD)の発症が重篤な輸血後副作用として問題となっている. GVHD発症の予防法として, 血液製剤のリンパ球の不活化が唯一有効な手段であると考えられている. 白血球の不活化は, 輸血用血液にγ線またはX線を照射し, リンパ球のDNAを損傷させることによると考えられている. 輸血学会においても平成4年1月に「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン」を提示し, GVHD発症の予防を推進している. 当センターにおいても, 平成6年7月から, 病院に納品された血液製剤に対し, γ線を照射する事による照射血輸血協力を開始した. 今回, 放射線照射協力状況及び照射血液の性状を調べたので報告する. 方法:本照射装置(IBL437C)のγ線照射量の確認を放射線熱蛍光線量計(松下電器, UD512P)により行った. この装置により15Gy, 25Gyを照射した赤血球M・A・P(RCM)についてATP・2,3-DPG, Na^+ K^+ 濃度, 上清Hb濃度を照射後6週間にわたり測定した. 同様に照射した濃厚血小板(PC)について, 照射後2日までpH, 凝集能, %HSR等の測定を行った. 結果及び考察:本照射装置では, 15Gy照射で80秒, 25Gy照射で130秒が必要であることが確認された. また15Gy, 25Gyの照射により, RCMのK^+ 濃度と上清Hb濃度は照射群にて有意に上昇し, Na^+ 濃度は低値を与えた. 血小板製剤への照射の影響はほとんど認められなかった. 協力状況については, 平成6年9月1日現在で契約5病院に対し, 17件の照射協力を行っており, 15Gy照射が7件, 25Gy照射が10件となっている. 又, 対象製剤はPCが14本, 白血球除去製剤が9本であり, 今後もさらに増加する傾向にある.
ISSN:0546-1448