慢性期失語症例に対する高気圧酸素療法

【目的】慢性期脳血管障害例における高次脳機能障害, その中でも失語症に対する高気圧酸素療法(HBO)の効果を検討する. 【対象】3カ月以上経過した7例(出血4例, 梗塞3例, 平均57.1歳), 超皮質性感覚失語1例, 超皮質性混合失語1例, Broca失語1例, Wernicke失語1例, 全失語3例(1例は交差性失語). 【方法】2気圧のHBOを60分を1回とし, 20~40回施行. その前後で標準失語症検査(SLTA)コーステスト, Reyの図などの成績を比較. たとえば, SLTAは26の下位項目の個々につき20%以上の改善を認めるものをひろい, その合計で改善の度合をみる. 後2者は...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 30; no. 12; p. 944
Main Authors 川津学, 上土橋浩, 川平和美, 田中信行, 堀内秀俊, 古江増裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1993
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Summary:【目的】慢性期脳血管障害例における高次脳機能障害, その中でも失語症に対する高気圧酸素療法(HBO)の効果を検討する. 【対象】3カ月以上経過した7例(出血4例, 梗塞3例, 平均57.1歳), 超皮質性感覚失語1例, 超皮質性混合失語1例, Broca失語1例, Wernicke失語1例, 全失語3例(1例は交差性失語). 【方法】2気圧のHBOを60分を1回とし, 20~40回施行. その前後で標準失語症検査(SLTA)コーステスト, Reyの図などの成績を比較. たとえば, SLTAは26の下位項目の個々につき20%以上の改善を認めるものをひろい, その合計で改善の度合をみる. 後2者は評価点の増減でみる, とした. 【結果】SLTAの10項目以上の改善を示したのは, 超皮質性感覚失語, 超皮質性混合失語, 交差性全失語. 改善は2カ月以上続いたが, 超皮質性感覚失語例では, コーステスト, Reyの図, 仮名ひろいテスト, 三宅式記銘カテストで著明な改善を示し, その傾向は2カ月以上続いた. 【考察】HBOの有効性は, 壊死部周辺の虚血や浮腫に対するrevascularizationやinverse steal syndromeを背景にするといわれているが, 効果が持続するのは細胞の形態学的な修復が起こるからと踏みこんで考えるべきだ. 酸素を大量に受け取りATPの産生が高まり, 蛋白合成が向上し細胞膜が修復されるのだろう. これらが慢性期にも起こりうるのは, 脳の可塑性の比較的高い非高齢者(自験3例は49, 51, 47歳)で, かつ軽~中等症の高次脳機能障害例の場合に限られてくるかもしれない.
ISSN:0034-351X