全脳虚血後再灌流早期の血圧が血液脳関門の透過性に及ぼす影響

われわれは, 第9回日本蘇生学会総会で全脳虚血後再灌流早期の血液脳関門(BBB)の透過性変化をEvans blue(EB)の定性的な漏出度で評価し, 虚血時間が重要な因子であることを報告したが, 再灌流時の血圧もBBBの透過性亢進に関与していると考えている. そこで, 今回は再灌流直後の循環動態がBBBの透過性変化に与える影響を, EB漏出度を定量的に評価することで検討したので報告した. <実験方法>雑種成犬21頭を, 非虚血対照群(n=3), 非虚血高血圧群(n=6), 虚血高血圧群(N=6), 虚血正常血圧群(N=6)の4群に分けた. 高血圧群は, ノルエピネフリンを持続投与し...

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Published in蘇生 Vol. 10; p. 76
Main Authors 古城繁, 近藤正得, 大川雅廣, 八井田豊, 下田豊, 八塚秀彦, 橋本秀則, 平川方久, 小坂二度見
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1992
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ISSN0288-4348

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Summary:われわれは, 第9回日本蘇生学会総会で全脳虚血後再灌流早期の血液脳関門(BBB)の透過性変化をEvans blue(EB)の定性的な漏出度で評価し, 虚血時間が重要な因子であることを報告したが, 再灌流時の血圧もBBBの透過性亢進に関与していると考えている. そこで, 今回は再灌流直後の循環動態がBBBの透過性変化に与える影響を, EB漏出度を定量的に評価することで検討したので報告した. <実験方法>雑種成犬21頭を, 非虚血対照群(n=3), 非虚血高血圧群(n=6), 虚血高血圧群(N=6), 虚血正常血圧群(N=6)の4群に分けた. 高血圧群は, ノルエピネフリンを持続投与し, 平均動脈圧を200mmHg前後に維持した. 虚血正常血圧群は, 下大静脈に留置したバルーンにより静脈還流を減少させ, 平均動脈圧を虚血前値程度に維持した. 非虚血対照群を除く3群で, 循環系パラメータとして, 平均動脈圧, 心係数, 頭蓋内圧, 脳血流量を測定した. また, EB漏出度(脳組織EB濃度/血漿EB濃度)を指標としてBBBの透過性変化を評価した. EB(5% 100mg/kg)の投与は, 各群とも血圧操作開始15分後より経大動脈的に行った. 投与15分後に脳を灌流摘出したのち, 大脳皮質, 大脳白質, 海馬, 線条体, 視床, 脳幹, 小脳の各領域と灌流直前の血漿中のEB濃度を蛍光光度計で定量した. なお, 脳虚血作製は上行大動脈遮断と大動脈・右房・大腿静脈間バイパス法で行い, 虚血時間は18分間とした. <結果および考察>平均動脈圧と心係数は高血圧群両群では高値を維持した. 各群のEB漏出度は, 非虚血群両群および虚血正常血圧群では, 各領域においてEB漏出度の群間の有意差はなかったが, 虚血高血圧群では他群に比し有意にEB漏出度が高い領域が多かった. 以上より, 虚血後の循環動態の変化は, BBBのEB透過性変化に対し大きく影響すると推察された. また, 虚血高血圧群内の小脳のEB漏出度は他領域より有意に高く, EB漏出度の亢進に領域差があることが示唆された. 更に, 同群の各領域で血管内皮の破綻と考えられる点状出血を認め, 特に小脳において著明であった.
ISSN:0288-4348