輸血感染症としての輸血後肝炎

輸血感染症は輸血療法を行う上で常に頭に入れておかねばならない重要な副作用の一つである. 保険診療上も, 輸血医療を行うに当たって, インフォームドコンセントを採り, 患者またはその家族に輸血医療のメリットとデメリットを明瞭に説明し治療に当てていくことが必要となった. 輸血後肝炎の原因ウイルスとしては, B型肝炎ウイルス(以下HBV)及びC型肝炎ウイルス(以下HCV)が代表的なウイルスである. 我が国の血液センターにおいては1989年にHBc抗体検査及び第一世代HCV抗体検査が, そして1992年に現在の第二世代HCV抗体検査が導入され, 臨床の場において輸血後B型肝炎及び輸血後C型肝炎に遭遇す...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 170
Main Author 日野邦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
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ISSN0546-1448

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Summary:輸血感染症は輸血療法を行う上で常に頭に入れておかねばならない重要な副作用の一つである. 保険診療上も, 輸血医療を行うに当たって, インフォームドコンセントを採り, 患者またはその家族に輸血医療のメリットとデメリットを明瞭に説明し治療に当てていくことが必要となった. 輸血後肝炎の原因ウイルスとしては, B型肝炎ウイルス(以下HBV)及びC型肝炎ウイルス(以下HCV)が代表的なウイルスである. 我が国の血液センターにおいては1989年にHBc抗体検査及び第一世代HCV抗体検査が, そして1992年に現在の第二世代HCV抗体検査が導入され, 臨床の場において輸血後B型肝炎及び輸血後C型肝炎に遭遇することは希な事となり, 我々もこの10年間に輸血後B型肝炎及び輸血後C型肝炎症例の経験はない. しかし, これらの輸血後肝炎がなくなった訳ではなく, 日本赤十字社の1997年の副作用調査においても12例の輸血後B型肝炎, 1例の輸血後C型肝炎が輸血と極めて因果関係が深いと結論づけられている. これらの問題点を明らかにするためには, 発生頻度が低い故に組織的に追跡調査する必要がある. HBVが発見されてから30年以上が経過した. HBV感染症に関しては殆どの事が解明されたかにすら思えるが, まだまだ未解明のことも多い. 最近, HBc抗体陽性ドナーから肝移植されたレシピエントがHBVに感染した事が大きく取り上げられて話題を呼んだ. 移植では免疫抑制状態になるので特殊な状況ではあるが, 少なくとも過去に感染を受け治癒して入ると思われる人でも, 体の何処かにHBVが潜んでいる事が証明された. さらには, HBs抗体が陽性になり肝機能障害も治まった典型的な急性B型肝炎患者からもHBV-DNAが検出され, HBVが長期間持続的に血中に存在するとの報告もみられる. 最近では供血者血液検査に遺伝子検査法の導入も始まっているが, これらの検査は抗原, 抗体検査とうまく組み合わせて行っていくべきか重要な課題である.
ISSN:0546-1448