動詞産出に関わる要因:健常者動詞産出との関連から

【目的】動詞の産出障害に関しては, 親密度, イメージの一致度等の要因が影響を及ぼすといわれている. 今回は, 健常者データをもとに動作刺激の多義性が動詞の産生に与える影響について検討した. 【方法】実験1 被験者:健常成人21名. 手続き:静止画40語と動画40語をコンピュータで提示し, 提示された動作を1語で書称するよう求めた. 実験2 被験者:失語症者2名. 実験材料:上記の動詞40語について健常者データを基に訓練語20語と非訓練語20語に分類し, さらに訓練語を動画訓練用10語と静止画訓練用10語に分けた. 手続き:(1)プレテスト:動詞40語(動画20語, 静止画20語)の呼称で,...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 21; no. 3; p. 197
Main Authors 杉山貴子, 藤井留衣, 青野奈美子, 相場恵美子, 渋谷直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 30.12.2004
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ISSN1347-8451

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Summary:【目的】動詞の産出障害に関しては, 親密度, イメージの一致度等の要因が影響を及ぼすといわれている. 今回は, 健常者データをもとに動作刺激の多義性が動詞の産生に与える影響について検討した. 【方法】実験1 被験者:健常成人21名. 手続き:静止画40語と動画40語をコンピュータで提示し, 提示された動作を1語で書称するよう求めた. 実験2 被験者:失語症者2名. 実験材料:上記の動詞40語について健常者データを基に訓練語20語と非訓練語20語に分類し, さらに訓練語を動画訓練用10語と静止画訓練用10語に分けた. 手続き:(1)プレテスト:動詞40語(動画20語, 静止画20語)の呼称で, 15秒以内の正反応を正答とした. (2)訓練期:訓練を5~8セッション行い, 15秒以内に呼称できなかった場合には, 意味ヒント, 語頭音ヒントを順に与えた. (3)ポストテスト:プレテストと同様に試行. 【結果】実験1:(1)最多頻出語の出現率では動画が静止画に比べ有意に高く, (2)出現語の種類数では, 静止画が動画より多様なバリエーションを呈することが明らかとなった. ただし, (1)出現率と(2)種類数で個々の刺激による差がみられた. 実験2:症例1については動画, 静止画教材とも訓練効果がみられず, 非訓練語への汎化もみられなかったが, 出現種類数の多い動詞はヒントを与えても喚語できない傾向がみられた. 一方, 症例2では, 動画, 静止画とも訓練効果がみられた(p<.05)が, 出現種類数の多い動詞については動画で80%の正答率であったのに対し, 静止画では33.3%であった. 【考察】健常者で出現種類数の多い動詞に関し, 失語症者では表出が困難になる傾向がみられた. この場合, ある動作表象から複数の動詞を喚語する可能性が高く, ターゲット語へのルートが弱くなっていると考えられる. 動作表象にアクセスする刺激の違いが喚語に影響を与えることが示唆された.
ISSN:1347-8451