前立腺癌の最適なスクリーニングシステムの開発

前立腺癌スクリーニングを住民検診に導入する場合は, 検診の暴露率の観点からは, 基本健康診査施行時におこなうPSA単独スクリーニングが優れている. 1次検診のPSA基準値としては, 年齢階層別基準値の概念が最近提唱され, 若い年齢層における早期癌の発見に寄与できると考えられることから, 現在注目されている. また, スクリーニングの費用対効果比の観点からは, 1次検診で異常がなかつた受診者の最適な再受診間隔の設定は重要である. 最近PSA基礎値という概念が提唱され, 基礎値に応じて前立腺癌の将来の罹患危険率が異なることがわかつてきた. 我々はPSA基礎値とその後のPSA上昇危険率, 前立腺癌罹...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 3; p. 303
Main Author 伊藤一人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.08.2005
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ISSN1343-2826

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Summary:前立腺癌スクリーニングを住民検診に導入する場合は, 検診の暴露率の観点からは, 基本健康診査施行時におこなうPSA単独スクリーニングが優れている. 1次検診のPSA基準値としては, 年齢階層別基準値の概念が最近提唱され, 若い年齢層における早期癌の発見に寄与できると考えられることから, 現在注目されている. また, スクリーニングの費用対効果比の観点からは, 1次検診で異常がなかつた受診者の最適な再受診間隔の設定は重要である. 最近PSA基礎値という概念が提唱され, 基礎値に応じて前立腺癌の将来の罹患危険率が異なることがわかつてきた. 我々はPSA基礎値とその後のPSA上昇危険率, 前立腺癌罹患危険率について分析し, PSA基礎値が1.1ng/ml~基準値以下の症例については毎年, 0.0~1.0ng/mlの症例においては3年ごとの受診を推奨している. 確定診断のための前立腺生検に関しては, 経直腸的超音波ガイド下の6ヶ所生検がゴールドスタンダードであるが, 最近, 臨床的に重要な癌を見逃す危険性が指摘されている. われわれは, 臨床的に重要な癌の体積は年齢によって異なると考えられ, 日本人の平均余命前立腺癌の倍加時間年齢前立腺体積をもとした新しい生検方法を導入し, 成果を上げている. 以上のような最適なPSAスクリーニングシステムの確立の試みは重要であり, さらには, 現時点でわかつているスクリーニングのメリットおよびデメリットを受診者に提供するインフォームドコンセントのシステムが構築されるべきである. 最適な診断システムが確立され, 治療効果とQOLの両面から優れた治療が可能になれぼ, 前立腺癌スクリーニングはより有用性の高いものになることは間違いない.
ISSN:1343-2826