伴性遺伝性魚鱗癬に発症した多発性巨大下腿潰瘍を伴った閉塞性動脈硬化症の一例

症例は有痛性多発性左下腿潰瘍を主訴とした65歳, 男性である. 四肢, 体幹に魚鱗様の紋理を認め, 同様の魚鱗癬を有する男子が家系内に6名いること, ステロイドサルファターゼが10pmol/DHEA/mg・protein/hr未満で, 本酵素の欠損と考えられたことより, 伴性遺伝性魚鱗癬と診断された. 下肢動脈造影では左腸骨動脈, 両浅大腿動脈の閉塞, 右腸骨動脈に狭窄を認めた. 以上より, 伴性遺伝性魚鱗癬に発症した閉塞性動脈硬化症による下腿潰瘍と診断した. 腹膜外アプローチにて Gelseal®人工血管 (直径8mm) による腹部大動脈-左総大腿動脈バイパス, 自家静脈による左大腿動脈-膝...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 23; no. 1; pp. 68 - 71
Main Authors 桜田, 徹, 鎌田, 誠, 柴田, 芳樹, 山岸, 逸郎, 阿部, 忠昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.01.1994
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Summary:症例は有痛性多発性左下腿潰瘍を主訴とした65歳, 男性である. 四肢, 体幹に魚鱗様の紋理を認め, 同様の魚鱗癬を有する男子が家系内に6名いること, ステロイドサルファターゼが10pmol/DHEA/mg・protein/hr未満で, 本酵素の欠損と考えられたことより, 伴性遺伝性魚鱗癬と診断された. 下肢動脈造影では左腸骨動脈, 両浅大腿動脈の閉塞, 右腸骨動脈に狭窄を認めた. 以上より, 伴性遺伝性魚鱗癬に発症した閉塞性動脈硬化症による下腿潰瘍と診断した. 腹膜外アプローチにて Gelseal®人工血管 (直径8mm) による腹部大動脈-左総大腿動脈バイパス, 自家静脈による左大腿動脈-膝窩動脈バイパス術を行った. 術後経過は良好で, 前脛骨部潰瘍の治癒は遷延したが, その他の潰瘍はほぼ1か月にて治癒した. 伴性遺伝性魚鱗癬では, 皮膚潰瘍の治癒機転はほぼ正常と考えられ, 潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症でも通常人と同様に対処してよいものと考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.23.68