潰瘍性大腸炎の既往を持つ HAM (HTLV-1 associated myelopathy) 患者に生じた気管支拡張症の1例

潰瘍性大腸炎 (UC) の既往をもつHAM (HTLV-1 associated myelopathy) 患者に生じた, 中枢気道壁の肥厚を伴う気管支拡張症の1例を経験した. 症例は37歳, 男性. 20歳時に潰瘍性大腸炎と診断され30歳前後に輸血により HTLV-1 に感染したと推測される. 胸部X線写真, 断層写真及びCTにより亜区域気管支の拡張, 気管から亜区域支に及ぶ気道壁の肥厚が認められた. 呼吸機能検査では低酸素血症, 閉塞性の強い混合性換気障害を示した. 神経学的所見及び髄液検査を基にHAMと診断した. 気管分岐部粘膜の生検組織はポリクローナルな HTLV-1 感染細胞を含むT細...

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Published in日本胸部疾患学会雑誌 Vol. 32; no. 4; pp. 358 - 363
Main Authors 棟方, 充, 川上, 義和, 鈴木, 勇, 山口, 悦郎, 藤田, 美悧, 鈴木, 潤一, 渡部, 直巳
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 社団法人 日本呼吸器学会 25.04.1994
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ISSN0301-1542
1883-471X
DOI10.11389/jjrs1963.32.358

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Summary:潰瘍性大腸炎 (UC) の既往をもつHAM (HTLV-1 associated myelopathy) 患者に生じた, 中枢気道壁の肥厚を伴う気管支拡張症の1例を経験した. 症例は37歳, 男性. 20歳時に潰瘍性大腸炎と診断され30歳前後に輸血により HTLV-1 に感染したと推測される. 胸部X線写真, 断層写真及びCTにより亜区域気管支の拡張, 気管から亜区域支に及ぶ気道壁の肥厚が認められた. 呼吸機能検査では低酸素血症, 閉塞性の強い混合性換気障害を示した. 神経学的所見及び髄液検査を基にHAMと診断した. 気管分岐部粘膜の生検組織はポリクローナルな HTLV-1 感染細胞を含むT細胞の著しい浸潤を示し, 一部は異型性を示した. 近年 HTLV-1 感染者に生じるATL細胞の浸潤や日和見感染とは異なる呼吸器疾患が報告され, HABA, HAB などの新たな疾患概念が提唱されている. 本例は広い意味でそれらに属し, またUCとの関連も推測される極めて稀な1例である.
ISSN:0301-1542
1883-471X
DOI:10.11389/jjrs1963.32.358