小口径血管吻合における縫合糸の意義

血管吻合治療に対して縫合糸がどのように関与し影響を与えているのかを、吸収性ならびに非吸収性縫合糸を用いて基礎的に検討し、吸収性縫合糸の血管吻合への応用の得失について明らかにした。雑犬39頭の腹部大動脈に代用血管を吸収性Polyglycolic Acid(PGA)糸, Polydloxanon (PDS)糸, contrlとして非吸収性のPolypropylene (PP)糸を用いて移植した。PGA糸吻合部は縫合糸が吸収された後では異物反応は消失し、長期になる程良好な組織治癒を示した。PP糸側は硝子化結合織が存在し、吻合形状の平滑化を妨げていた。全例に吻合不全、動脈瘤の発生をみず、12ヵ月後の引...

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Published in人工臓器 Vol. 14; no. 2; pp. 971 - 974
Main Authors 稲葉, 雅史, 中山, 一雄, 笹嶋, 唯博, 久保, 良彦, 和泉, 裕一, 佐藤, 綾子, 小窪, 正樹, 境, 普子, 森本, 典雄, 鮫島, 夏樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本人工臓器学会 15.04.1985
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ISSN0300-0818
1883-6097
DOI10.11392/jsao1972.14.971

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Summary:血管吻合治療に対して縫合糸がどのように関与し影響を与えているのかを、吸収性ならびに非吸収性縫合糸を用いて基礎的に検討し、吸収性縫合糸の血管吻合への応用の得失について明らかにした。雑犬39頭の腹部大動脈に代用血管を吸収性Polyglycolic Acid(PGA)糸, Polydloxanon (PDS)糸, contrlとして非吸収性のPolypropylene (PP)糸を用いて移植した。PGA糸吻合部は縫合糸が吸収された後では異物反応は消失し、長期になる程良好な組織治癒を示した。PP糸側は硝子化結合織が存在し、吻合形状の平滑化を妨げていた。全例に吻合不全、動脈瘤の発生をみず、12ヵ月後の引つ張り及び耐圧試験ではPGA側とPP側の間に有意差を認めなかつた。縫合糸の吻合部強度への関与は長期になる程少なくなる事が確認された。PDS糸はmonofilament構造の吸収性縫合糸であり、抗血栓性に優れ組織損傷が少なく、小口径血管吻合ではより理想に近い糸であると考えられた。
ISSN:0300-0818
1883-6097
DOI:10.11392/jsao1972.14.971