剖検症例における悪性腫瘍に合併した転移性肺胞石灰化症の検討 -診断と成因について
転移性肺胞石灰化症は高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍や慢性腎不全に合併する稀な病態である. 本院剖検 (1966年~1989年) 2,993例中, 肺組織 Kossa 染色にて広範な肺組織カルシウム沈着を認めた8例の転移性肺胞石灰化症について, 基礎病変, 血清カルシウム, 腎機能, 胸部レ線, 骨シンチグラフィー及び組織学的病変を検討した. 基礎疾患は悪性リンパ腫3例, 多発性骨髄腫2例, 肺癌2例, 急性骨髄性白血病1例であり, 全例で血清カルシウムの上昇と腎機能低下を認めた. 胸部レ線はほぼ正常から浸潤影を呈する症例など多彩で, 転移性肺胞石灰化症に特異的所見はなかった. 骨シンチグラフィ...
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Published in | 日本胸部疾患学会雑誌 Vol. 29; no. 8; pp. 963 - 970 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English |
Published |
社団法人 日本呼吸器学会
25.08.1991
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Summary: | 転移性肺胞石灰化症は高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍や慢性腎不全に合併する稀な病態である. 本院剖検 (1966年~1989年) 2,993例中, 肺組織 Kossa 染色にて広範な肺組織カルシウム沈着を認めた8例の転移性肺胞石灰化症について, 基礎病変, 血清カルシウム, 腎機能, 胸部レ線, 骨シンチグラフィー及び組織学的病変を検討した. 基礎疾患は悪性リンパ腫3例, 多発性骨髄腫2例, 肺癌2例, 急性骨髄性白血病1例であり, 全例で血清カルシウムの上昇と腎機能低下を認めた. 胸部レ線はほぼ正常から浸潤影を呈する症例など多彩で, 転移性肺胞石灰化症に特異的所見はなかった. 骨シンチグラフィーでは2例に両肺びまん性の異常集積を認めた. 組織学的には肺胞壁へのカルシウム沈着による浮腫と線維化を認め, 呼吸不全の原因と考えられた. 高カルシウム血症, 腎不全を合併した悪性腫瘍では, 転移性肺胞石灰化症は重要な合併症であり, その診断には経時的な骨シンチグラフィーによる検索が有用である. |
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ISSN: | 0301-1542 1883-471X |
DOI: | 10.11389/jjrs1963.29.963 |