鉄の充足度と貯血中及び術後貧血の回復について

目的:術前の鉄の充足度が自己血貯血中, 及び術後の貧血からの回復にどの様な影響を及ぼすのかを検討した. 方法:福島医大と岩手医大で子宮筋腫に対する腹式単純子宮全摘術を行う目的で術前自己血貯血を施行した患者中, 貯血前Hb値≧12g/dl,Fe/TIBC≧16%, Ferritin(Ft)≧20ng/mlを正常群(53例), それぞれ順に≧12g/dl, <16%, <20ng/mlを潜在性鉄欠乏群(19例), <12g/dl, <16%, <20ng/mlを鉄欠乏性貧血群(23例)とした. 結果:各群で年齢, 体重, 貯血期間, 術中出血量の平均値に有意差はなかった. 貯血期間におけるHb値の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 46; no. 3; p. 332
Main Authors 田崎哲典, 後藤健治, 佐藤淑子, 藤井喜榮子, 佐々木さき子, 高舘潤子, 上机美穂子, 伊藤忠一, 大戸斉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.06.2000
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Summary:目的:術前の鉄の充足度が自己血貯血中, 及び術後の貧血からの回復にどの様な影響を及ぼすのかを検討した. 方法:福島医大と岩手医大で子宮筋腫に対する腹式単純子宮全摘術を行う目的で術前自己血貯血を施行した患者中, 貯血前Hb値≧12g/dl,Fe/TIBC≧16%, Ferritin(Ft)≧20ng/mlを正常群(53例), それぞれ順に≧12g/dl, <16%, <20ng/mlを潜在性鉄欠乏群(19例), <12g/dl, <16%, <20ng/mlを鉄欠乏性貧血群(23例)とした. 結果:各群で年齢, 体重, 貯血期間, 術中出血量の平均値に有意差はなかった. 貯血期間におけるHb値の低下度は鉄欠乏性貧血群で軽度であり, 術後の回復度はむしろ正常群で速やかであった. しかし最終的に術後2週のHb値の平均値において各群間に有意差はなかった. Hb増加量(ΔHb)は術前, 各群間で有意差はなかったが, 術後は正常群で有意に高かった. 結語:術前に鉄の充足度の高い症例では術後貧血からの回復が促進される可能性がある. しかし貯血期間, 特にそれが短い場合はHbの回復への効果は少ない. 一方, 鉄欠乏性貧血群では既に内因性エリスロポエチンのレベルが高く, 貯血期間が短くても鉄剤で速やかな回復が得られる. しかし術後は鉄欠乏のため回復は緩徐である.
ISSN:0546-1448