血漿由来血液製剤の「適正使用」に対する認識の相違
【目的】稀ながら血漿蛋白濃度の維持が目的と思われる血漿由来血液製剤の使用がある. また最初は合目的的な使用でも病態や検査データの推移とは無関係につい漫然と画一的な使用となる場合もある. 一方で適応外とは認識しつつ, 文献での有用性の報告を楯にその正当性を主張し使用する医師もいる. そこで診療報酬明細書を基に当院における保険適応外使用と判断されたケースから, 血漿由来血液製剤の「適正使用」を考えてみた. 【方法】当院において1998年1月から10月までに使用された血漿由来血液製剤のうち, 保険適応外使用と判断されたケースを対象とした. FFPに関しては輸血検査室のデータベースを, また血漿分画製...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 199 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1999
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【目的】稀ながら血漿蛋白濃度の維持が目的と思われる血漿由来血液製剤の使用がある. また最初は合目的的な使用でも病態や検査データの推移とは無関係につい漫然と画一的な使用となる場合もある. 一方で適応外とは認識しつつ, 文献での有用性の報告を楯にその正当性を主張し使用する医師もいる. そこで診療報酬明細書を基に当院における保険適応外使用と判断されたケースから, 血漿由来血液製剤の「適正使用」を考えてみた. 【方法】当院において1998年1月から10月までに使用された血漿由来血液製剤のうち, 保険適応外使用と判断されたケースを対象とした. FFPに関しては輸血検査室のデータベースを, また血漿分画製剤に関しては薬剤部における受け払い簿を基にした. 査定状況は診療報酬明細書から, また血液凝固関連検査の実施状況は検査部のホストコンピュータデータを利用した. 【結果】(1)FFPについて1)調査期間の総使用量は21,886u(1u=200mL由来)で, 1336例の患者に用いられているので, 一人あたり16.4u使用したことになる. 2)減点された単位数は618uであり, これは使用量の2.8%にあたる. 3)その例数は42例(83件)であり使用者の3.1%であった. 4)減点理由は「過剰」が54件(65%)と最も多く, 「不適当」が21件(25%), 適応外が8件(10%)であった. 5)科別では件数順に, 脳外科(27件/9例), 消化器外科(19/12), 救急センター(13/10), 消化器内科(11/4), 婦人科(9/3), 泌尿器科(3/2), 循環器外科(1/1)であった. 6)血液凝固系の検査の実施率はFFPの投与前は27例(64%)であり, そのうち実際に異常(PTが50%以下, APTTが正常値より10秒以上延長, AT IIIが50%以下)が認められたのは13例(48%)であった. また投与後の検査の実施率は23例(54%)にすぎなかった. (2)血漿分画製剤について1)アルブミン製剤の平成9年度の使用量は138.5Kgで減点率は8.2%であった. 2)診療報酬削減金額からみると血漿分画製剤が約3割を占めていた. 【考察】FFPの適正使用が叫ばれて久しい. レセプトの審査は傷病名と使用量(200~400mL/日, 重篤な場合は800mL/日)を主な基準としているようであり, 「過剰使用」と判断されたケースが65%を占めた. 一方, 凝固因子の補充が主たる目的とはいうものの, 文献的には様々な有用性の報告があり, 臨床の現場では困惑気味である. 減点の対象が全て不適切な使用と判断されたことに熱心に治療を行った医師は不満である. 血液製剤の適正使用に関するシンポジウムなどでも外科系医師の主張との微妙な差異に気づく. 輸血料の算定上の注意として所謂「濃赤との抱き合わせ輸血」の回避が記されているが, 血液製剤の安全性が高まった現在, それを肯定する意見もある. 今回の調査で減点件数の多い科が必ずしもFFPの使用頻度が高いわけではなく, また凝固系検査の「3日毎の評価」の実施率が低いのは, 使用目的が違うからなのだろうか. 「適正使用」に関する認識の相違は「循環血漿量の改善」以外にもまだまだありそうである. |
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ISSN: | 0546-1448 |