東京都における社会経済的困難層の結核対策-治療開始と継続の困難要因について

目的 東京都における結核に罹患しやすい人口集団(以下社会経済的困難層)について結核の治療開始と継続を困難にしている要因を明らかにし,社会経済的困難層に対する結核対策の充実や実行可能な対応策を検討する.方法 東京都内で結核治療を受けた経験がある社会経済的困難層の人々に,質問紙を用いた半構造化面接を行いデータの収集をした.面接で得られた音声データの逐語録を作成し,結核治療へのアクセスから治療完了までの過程を時系列に沿って質的に分析を行った.結果 医療機関への受診と結核診断が遅れる実態原因が示唆された.症状の出現後,自分から受診行動をとらなかった者は身近な人からの働きかけで全員が受診に至っていた.治...

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Published in保健医療科学 Vol. 59; pp. 396 - 397
Main Author 草深 明子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published National Institute of Public Health 01.12.2010
国立保健医療科学院
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ISSN1347-6459

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Summary:目的 東京都における結核に罹患しやすい人口集団(以下社会経済的困難層)について結核の治療開始と継続を困難にしている要因を明らかにし,社会経済的困難層に対する結核対策の充実や実行可能な対応策を検討する.方法 東京都内で結核治療を受けた経験がある社会経済的困難層の人々に,質問紙を用いた半構造化面接を行いデータの収集をした.面接で得られた音声データの逐語録を作成し,結核治療へのアクセスから治療完了までの過程を時系列に沿って質的に分析を行った.結果 医療機関への受診と結核診断が遅れる実態原因が示唆された.症状の出現後,自分から受診行動をとらなかった者は身近な人からの働きかけで全員が受診に至っていた.治療の継続は,調査対象者12 人中12 人が服薬支援者の支援を受けながら直接監視下短期化学療(Directly Observed Treatment Short-course:以下DOTS とする)を行い治療継続又は完了ができており,治療継続を妨げる大きな困難は今回の調査では見いだせなかった.結論 結核治療の開始が遅れる要因には,症状の出現から受診までに時間を要することや検診後の受診行動へ結びつく支援の不足があると示唆された.その要因には,社会経済的困難層の人々の生活の形態や傾向が影響していると思われた.加えて,一般病院の結核に対する意識の低さが要因と思われる診断の遅れもあると示唆された.
ISSN:1347-6459