グリーンケミストリーを基盤とした有機分子触媒的不斉反応の開発
「はじめに」20世紀後半から活発に研究されてきた精密有機合成化学は, 遷移金属を巧みに用い, 目的物だけを選択的に作り出す新反応を提供してきた. しかしながら, 21世紀に入り, 環境汚染や資源の枯渇問題などにより, 環境負荷の少ない化学合成法が求められている. 有機分子触媒は金属触媒と比較して毒性が少なく, 安価であり, 湿気や酸素に安定であるため, 不活性ガスや特殊な設備, 技術が不要であるなどの特徴を有しており, 次世代のクリーンな触媒として注目されている. したがって, 有機分子触媒反応の開発は持続可能な社会に応えるために極めて意義深い研究課題である. ListらによるL-プロリンを不...
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Published in | YAKUGAKU ZASSHI Vol. 141; no. 10; pp. 1137 - 1145 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬学会
01.10.2021
日本薬学会 |
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Summary: | 「はじめに」20世紀後半から活発に研究されてきた精密有機合成化学は, 遷移金属を巧みに用い, 目的物だけを選択的に作り出す新反応を提供してきた. しかしながら, 21世紀に入り, 環境汚染や資源の枯渇問題などにより, 環境負荷の少ない化学合成法が求められている. 有機分子触媒は金属触媒と比較して毒性が少なく, 安価であり, 湿気や酸素に安定であるため, 不活性ガスや特殊な設備, 技術が不要であるなどの特徴を有しており, 次世代のクリーンな触媒として注目されている. したがって, 有機分子触媒反応の開発は持続可能な社会に応えるために極めて意義深い研究課題である. ListらによるL-プロリンを不斉触媒として用いた直接的不斉アルドール反応の報告以降, 不斉有機分子触媒は医薬品や生理活性物質を合成するための重要なツールの1つになりつつある. しかしながら, 不斉有機分子触媒の歴史はまだ浅く, 触媒活性, 反応の多様性など, 実用化には多くの問題を抱えている. |
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ISSN: | 0031-6903 1347-5231 |
DOI: | 10.1248/yakushi.21-00130 |