ヌクレオソーム中におけるヒストンテールの特性とアセチル化の影響

「1. はじめに」ヒトをはじめとする真核生物の細胞内では, DNAはヒストン八量体に巻きついた複合体(ヌクレオソーム)を形成し, それが互いに凝集してクロマチンとなる. ヌクレオソーム同士の間にはDNAの負電荷による反発力が生じるが, 正電荷を持つアミノ酸残基(リシンとアルギニン)が多く存在するヒストンの末端領域, ヒストンテール(以下テール)の仲介により, クロマチンへの凝集が可能となる. 近年, クロマチンは遺伝子の発現, 複製などの機能制御に積極的な役割を果たしていることが明らかとなってきた. 例えば, 高度に凝集したクロマチンでは, 転写関連タンパク質はDNAに接触し難くなるため転写が...

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Published in生物物理 Vol. 57; no. 2; pp. 095 - 097
Main Authors 桜庭, 俊, 河野, 秀俊, 池部, 仁善
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2017
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.57.095

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Summary:「1. はじめに」ヒトをはじめとする真核生物の細胞内では, DNAはヒストン八量体に巻きついた複合体(ヌクレオソーム)を形成し, それが互いに凝集してクロマチンとなる. ヌクレオソーム同士の間にはDNAの負電荷による反発力が生じるが, 正電荷を持つアミノ酸残基(リシンとアルギニン)が多く存在するヒストンの末端領域, ヒストンテール(以下テール)の仲介により, クロマチンへの凝集が可能となる. 近年, クロマチンは遺伝子の発現, 複製などの機能制御に積極的な役割を果たしていることが明らかとなってきた. 例えば, 高度に凝集したクロマチンでは, 転写関連タンパク質はDNAに接触し難くなるため転写が抑制されるが, クロマチンの弛緩時には転写が活性化される. このクロマチンの弛緩を誘起する大きな要因のひとつがテールのアセチル化である. 転写を活性化するアセチル化は, リシン残基を修飾しその正電荷を中和することによって, テールとDNAとの静電相互作用を弱める.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.57.095