腹腔鏡を用いた移動性精巣における腹膜鞘状突起開存の検討

【目的】移動性精巣の外科的治療方法は精巣固定術であるが,精巣固定術の場合に鼠径部からの腹膜鞘状突起(patent processus vaginalis:以下PPV)の高位結紮を行うことが標準術式とされる.しかし移動性精巣は精巣の牽引が容易であることから,経陰囊的に精巣を牽引し陰囊内に固定することが可能である.よって鼠径部からの高位結紮を省略する方法も施行されている.この場合PPVの有無が術後の鼠径ヘルニアの合併を来す可能性が危惧される.我々は移動性精巣の治療の際に腹腔鏡でPPVを確認し,PPV陽性は高位結紮付加,陰性例は陰囊固定のみを選択している.移動精巣におけるPPVの有無について検討した...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 54; no. 6; pp. 1194 - 1197
Main Authors 石井, 信二, 七種, 伸行, 浅桐, 公男, 深堀, 優, 田中, 芳明, 八木, 実, 小松崎, 尚子, 東舘, 成希, 吉田, 索, 橋詰, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.10.2018
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.54.6_1194

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Summary:【目的】移動性精巣の外科的治療方法は精巣固定術であるが,精巣固定術の場合に鼠径部からの腹膜鞘状突起(patent processus vaginalis:以下PPV)の高位結紮を行うことが標準術式とされる.しかし移動性精巣は精巣の牽引が容易であることから,経陰囊的に精巣を牽引し陰囊内に固定することが可能である.よって鼠径部からの高位結紮を省略する方法も施行されている.この場合PPVの有無が術後の鼠径ヘルニアの合併を来す可能性が危惧される.我々は移動性精巣の治療の際に腹腔鏡でPPVを確認し,PPV陽性は高位結紮付加,陰性例は陰囊固定のみを選択している.移動精巣におけるPPVの有無について検討した.【方法】当施設における外科的治療を行った4歳未満の移動性精巣症例で,腹腔鏡下PPV確認を行った24症例39精巣に対しPPVの有無について検討した.【結果】左右側数は両側15症例,右側のみが2症例,左側のみが7症例であった.精巣挙上範囲は鼠径部までが18精巣,陰囊上部までが21精巣であった.PPV陽性例は5精巣であり,右2例,左3例であり,左右側や精巣挙上範囲の有意差は認められなかった.術後の鼠径ヘルニア発症は認められなかった.【結論】今回の検討では移動性精巣のPPV陽性率は従来報告されている鼠径ヘルニアの対側PPV陽性率よりも低く,陰囊アプローチのみで精巣固定しPV結紮を省略することは可能だと思われる.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.54.6_1194